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25 2020

人間社会を生きているのは昔も今も同じ。 「源氏物語」にもモテるヒントが!?

人文学部日本文化学科 関本 真乃 講師

「古典」と聞くと、自分とは関わりのない遠い世界のことと思う人がいるかもしれません。でも、決してそんなことはなく、意外と身近なのだと関本先生は言います。「時代も価値観も違うけれど、人間社会を生きているという点では現代と同じ。生きる上でのヒントもいっぱいあります。源氏物語を理解できるようになると、モテるかもしれませんよ(笑)」。

【研究】キャラが立っていて薄っぺらくない。『源氏物語』の魅力は今も

研究テーマは、『源氏物語』読者による作り物語制作。千年間、享受されてきた『源氏物語』は、どのような文化・社会の中で享受されていたのかを明らかにすることによって、その当時に生きた人々の価値観を探り、人間とは何かを追究しています。例えば、私が研究している鎌倉時代・南北朝時代に成立した物語は、今の価値観では『源氏物語』の模倣が多くオリジナリティに欠けると思われがちですが、模倣することにこそ意味・価値があったと考えられます。当時の貴族社会には、『源氏物語』の世界への憧れがあったからです。これはあの場面だと分かる人たちが、「ここだね」みたいに確認し合う。内輪受け的なところがあるので、理解できない人が増えると評価されなくなりますが、それも当時の在り方が出ていて面白いですよね。『源氏物語』を元ネタにしたものは江戸時代にもありますし、現代でもドラマや漫画、ゲームなど形を変えながら生き続けています。それだけ影響力があるのは、やはり物語としての力が素晴らしいんだと思います。各人物にすごくリアリティがあって、人間とは何かを紫式部ほど鋭く観察した人はなかなかいない。読めば読むほど、そう感じます。

【研究】白黒だけではなく、その間が無数にあることを文学は教えてくれる

物語を理解するには、歴史、日本語の変遷、社会の在り方、価値観などの理解が必要なので、さまざまな文献で多方面から調べていきます。研究を通して、「常識」と思っていたことがたかだか数十年の積み重ねだと分かり、自分の価値観が相対化されるのが面白さ。普遍的な人間の在り方とは何かを知りたくなります。また、自分を縛るものから自由になれます。最近は「こうあるべき、それ以外はダメ」と、とにかく白黒つけたがる傾向にありますが、その間の無数のグレーを拾い上げて彩っていくのが文学。しっかり解釈して読み込んでいくと、人間観察が深まり、生きていく上でも糧になります。白黒つけるのはすごくしんどいし、生き方を息苦しくさせたりもしますから、そうじゃないところもあることを文学は教えてくれます。

【授業】頭を柔らかくして、いろんな古典の楽しみ方を知る入り口に

「日本文学史Ⅰ」では、古事記や万葉集から源氏物語、平家物語、奥の細道など、毎回それぞれの時代を代表する古典文学作品について学びます。全体的な理解ができるように、例えば平安時代の社会のざっくりとした見方を最初に示し、写真やイラストなども多用して説明します。現代に引き寄せた例を出したりしながら、今の自分と関わりを持って考えられるものだと伝えています。和歌の回なら、この表現は素晴らしいとかすごくおしゃれという学生からの感想もあります。源氏物語の回では、ドロドロしたストーリーがあるのでこんなのは受け付けない、みたいな学生もいますが、それは自分の周りにだけある価値観に当てはめるから。もっと頭を柔らかくして、視野を広げて、価値観を相対化することが大学での勉強という気がします。

千年前の恋愛や笑い話から、今を生きる上でのヒントが見つかる

古典には難しそうとか高尚というイメージがあるようですが、そんなことは全然ありません。笑い話もありますし、下ネタも恋愛も、人間関係や政治の話もあって、皆さんが生きる上でヒントになることもいっぱい散らばっています。例えば源氏物語を理解できるようになると、少し生きやすくなるかもしれません。源氏物語は人間観察が素晴らしく、人間関係の悩みや生きづらさといったものの本質が流麗な文章で可視化されているからです。物語を読むだけにとどまらず、何かを読み解き理解しようとする習慣や態度は、現代社会を生きる上でも必要になってくると思います。それは、文献だけではなく社会や人間を読み解く力にもつながり、価値観がどんどん変わっていく現代においても生かせる力だと思うので、ぜひ身につけてほしいですね。

人文学部日本文化学科 関本 真乃 講師
[専門分野]国文学[主な担当科目]日本文学史I、日本文学特論I、日本古典文学II