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26 2021

<TOPIC 工学部生命工学科>長さ約0.05mmのユーグレナ で挑んだ環境に優しいエネルギーの可能性。

北海道の寒さと温泉熱を細胞の凍結・融解に利用して、ユーグレナ(ミドリムシ)から低コストでバイオ燃料を抽出できないか。その方法の開発を目指す研究プロジェクトに、古澤さん・福士さん・矢田部さんのチームが挑戦しました。研究の成果は、全国の大学生などが研究発表する「第9回サイエンス・インカレ」(主催:文部科学省)で審査の結果、ポスター発表に採択されたほか、「第2回道内学生による『ものづくり製品化&企業化支援事業』」(主催:札幌商工会議所)、「北海学園大学学園論集」でも発表。この取り組みで3人は、本学「生命工学学生研究賞」を受賞しました。

工学部生命工学科4年 古澤 惇平(北海道札幌北高校出身/写真右)
工学部生命工学科4年 矢田部 歩果(北海道大麻高校出身/写真中央)
工学部生命工学科4年 福士 奈津希(北海道札幌南陵高校出身/写真左)

挑むことは苦しい、けれど面白い。

—実験中を振り返って、印象深いことを教えてください。

矢田部 環境に優しいエネルギーとして注目されているバイオ燃料ですが、ユーグレナなどのオイル産生微生物を用いたオイル抽出は、現在の方法ではコストが高くなってしまう。そこで、凍結・融解処理でユーグレナの細胞を壊して、安価にオイルを取り出せる新しい方法を提案しようというのがテーマでしたから、当然、誰もやったことがない研究です。実験の方法ももちろん確立されていないので、先生と相談しながら、自分たちも試行錯誤の連続でした。どうにかして結果を出したくて、授業の合間や終わってからなど、時間を見つけては実験に取り組む日々でした。

福士 サイエンス・インカレのエントリーの締め切りがあったので、それに間に合わせるには時間が足りないのでは、と焦る気持ちがいつもありました。そんな中で、実験をしていて思い通りのデータが出なかったりすると、苦しかったですね。でも、そういう時はまた違うアプローチを考えて。チームとして協力して作業を進めていたので、2人が頑張っているところを見ると私もやらなくちゃと、気持ちを切り替えることができました。そもそもが全部お膳立てしてもらって取り組む授業での実験とは違い、何をするかとか、何が必要かとか、自分たちで一から考えなければなりません。そこが一番大変であり、同時に、すべて自分たちの考えで自由にできることは楽しさでもありました。私は、ユーグレナを扱えることに興味を持ってプロジェクトに参加したので、苦しいことはあっても、実験そのものが面白かったですね。

古澤 僕が特に大変だったなと思い出すのは、参考になる先行研究などを調べていく作業。研究の最初のプロセスとして、少しでも参考になりそうな情報をまず集めるのですが、あまり研究が進んでいない分野の場合は日本語で書かれたものがなく、英語の文献しかないということが結構ありました。英語を訳しながら読んでいかなければならず、求める情報を探すのにも苦労しました。しかも、実験を新たに組む度に必要な作業なので、インターネットや文献を調べる機会が何度もあって。ただ、自分からそんなふうに新しいことを調べていく経験はそれまでなかったので、大学院への進学を予定している僕にとっては、いい訓練になったとも思っています。

実験と検証だけじゃない、研究の先に見えたもの。

—研究の結果、サイエンス・インカレではポスター発表部門に選ばれ、ほかにも発表の機会があったそうですね。

古澤 はい。サイエンス・インカレに関しては、研究をポスターとしてまとめるまでに、まずテーマに関係するオイル産生藻類や遺伝学などの理論を学んで、オイル産生藻類を培養をして、その細胞を凍結・融解処理して・・・と1年以上にわたるさまざまな工程がありました。提出した時にはやっとひと仕事終えられたという充実感があり、しかもそれが審査の結果、生物分野のポスター発表部門に採択されたわけですから、すごくうれしかったです。ただ、参加予定だった滋賀県での発表会が、新型コロナウイルスの影響で中止になってしまったのは残念でした。

矢田部 ほかには、札幌商工会議所で企業や金融機関の方たちを前に、研究についてプレゼンテーションを行いました。そこで面談希望の形で投票していただき、私たちに声をかけてくださった銀行と微生物を扱う企業へ、後日うかがうことに。その時は私が説明を担当したんですが、例えば銀行であれば融資の視点が必要ですし、先方に関心を持ってもらえるよう業務内容を意識して工夫しました。この経験は、就職活動の面接時にすごく役立ちました。今回のプロジェクトは実験から発表の機会まであり、それらを含めて研究活動なのだということもよく分かりました。今までにない緊張感や達成感も味わえて、大学生のうちにこうした経験ができたのは大きな収穫でした。

古澤 サイエンス・インカレのための研究ノートをもとにして、北海学園大学の論集に先生たちとの共著で投稿もしました。論文を書くなんて初めてのことだったので、論文に適した体裁や文体などを先生に教わりながら、加筆・修正していきました。1文字1文字推敲し、図を入れたりして分かりやすく、読みやすくしようと3人で手分けして。何回も何回も書き直し、ようやく完成させることができました。研究の結果をこういうふうに形として残せるのは、うれしいことなんだなと実感しました。

福士 論文はいろいろな先生に何度も見ていただいて書き直したので、個人的にも文章を書くのが少しはうまくなったかなと思います。就職活動でエントリーシートを書く時に、そう感じられました。サイエンス・インカレ、商工会議所での発表、そして論集。結果が出るところまで実験をやり遂げることができたから、いろいろな取り組みにもつながったのだと思います。私たちの研究では、分からないことがもちろんまだたくさんありますが、ユーグレナのバイオ燃料でバスを走らせるなど実例もあるようなので、これからこの分野がどうなっていくか楽しみです。

自分、チーム、ひとつずつ大切に積み重ねていくこと。

—今回のプロジェクトを通して、プラスになったこと、得られたことは?

福士 実験などの記録を確実に取っていくことが、研究ではすごく大事だと学びました。チームで進めていくので、例えば実験を引き継ぐ時にはデータを絶対に間違えないようにしなければなりません。注意深く記録を取り、情報共有することの重要性が身に染みました。いろいろな場に合わせてプレゼンテーションの資料を作ったことも、勉強になりました。もともと資料作りは好きだったのですが、どんな人たちに向けて発表するのかを考えて言葉や図などを選ぶと、内容をよりしっかり伝えられることが分かりました。

古澤 僕の場合、自分で手を動かして実験の経験を重ねられたこと、研究を行うプロセスを具体的に学べたことが大きかったです。この活動を通して、大学院に進んでからの学び方をより具体的にイメージすることができたので、これから自分の研究テーマと向き合っていく覚悟が決まったという感じもあります。活動中はいろいろな先生が時間を割いてすごく面倒を見てくださったので、関係性が深まったと思えることも大きいです。

矢田部 私が強く感じたのは、時間の大切さ。エントリーなどの期限が決まっていたので、できるだけ効率良く、時間の使い方を考えながら行動できるようになったかなと思います。もう一つは、人との関わり方。チームの仲間のほか、先生をはじめ年上の方たちと接する機会もすごく多かったので、社会に出てからの人間関係にも生かせそうです。そもそも私はバイオ分野の実験や分析など手を動かして作業するような就職を志望していて、実験を経験して学んでおきたいという気持ちでプロジェクトに参加しました。種苗会社の品質管理職に内定できましたから、今回の取り組みで得られたものを発揮していければと思っています。

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