<TOPIC 経済学部> ここで本気でやりたいことはなんだ? すべてはそこから始まる。
経済学部が授業の一環として天売島(羽幌町)で展開する「地域協働フィールドワーク」。学生が地域に中・長期滞在して地域活動に取り組むことで、地域の魅力・課題・可能性を学び、地域の皆さんとともに考え、行動・発信することが目的です。受け入れ地域の天売島、NPO法人北海道エンブリッジとの連携・協力のもとで、学生たちは空き店舗を活用した交流の場づくりや島の魅力を伝える冊子の制作などに取り組んできました。 2020年度は例年の活動が難しい状況になりましたが、コロナ禍でもできることを考え、前年度の成果として冊子の第2弾を発行し、新たにウェブサイト制作を開始。メンバーの市川さん・渡部さん・森下さんに、活動への思いを聞きました。
経済学部1部経済学科4年 市川 雄二郎 (北海道小樽潮陵高校出身)
経済学部2部地域経済学科4年 渡部 凌 (札幌静修高校出身)
経済学部1部地域経済学科2年 森下 龍弥 (北海道苫小牧東高校出身)
※学年は取材当時
コロナ禍でもできることを。
—市川さんと渡部さんは、2年次の2018年度から活動に参加してきたのですよね。
市川 そうです。天売島で島民の方たちと交流を深めながら、空き店舗を活用して島民と観光客、学生の交流の場「てん」を手作りで開設したり、島の文化や歴史について聞き取り調査をして冊子を発行したりしてきました。2019年度は活動の代表として、夏休みに「てん」で飲食店を運営したほか、新たな企画で第2弾の冊子の制作も進めました。それで、本来であれば2020年2月に天売島で活動の報告会を開き、お世話になった島民の方たちに挨拶する予定でした。でも、新型コロナウイルスの影響で開催できなくなり、島に行くこともできなくなってしまいました。
—2020年度の活動は限られてしまったものの、冊子は発行にこぎ着けたそうですね。
市川 はい。既存の観光パンフレットには載っていないような魅力について、2019年夏のうちに島民の方々への聞き取り調査は終えていたのですが、コロナ禍で発行が延期に。その制作を改めて進め、「学生の天売島観光ガイド てうりたび」として8月に発行することができました。活動の成果を冊子という形に残せて良かったです。第1弾の冊子「学生がみた 移り変わる天売島」の制作も担当したので、内容や写真などをそれ以上に充実させようという気持ちで作りました。
渡部 冊子を完成させて、お世話になった島の方たちに見ていただくことができてうれしいです。冊子はどちらも島内の観光案内所と羽幌町のフェリーターミナルに置かせていただいています。コロナの状況が落ち着いたら、これを活用して多くの人に天売島を楽しんでほしいです。
森下 僕は、今年度から活動に参加しました。小さい頃から植樹活動に参加したり、環境系のことに興味を持っていたので、この活動を知って面白そうだなと思ったんです。大学入学後、IT系の分野に興味を持つようになり、個人的にも勉強してきたので、活動に関するウェブサイトの制作を提案。サイトのコンセプトなどについては、担当の先生と相談したり、天売島の方たちとオンラインでミーテイングをしたりして、活動の紹介ではなく「てん」を利用してもらうためのサイトにすることにしました。僕たち学生では、「てん」を利用した飲食店の営業などは夏休み中ぐらいしかできないので、2019年度からはレンタルスペースにしていますが、もっとたくさんの人に知ってもらい、利用してもらいたい。そのためのサイト制作の作業を進めています。最初は、島の外から人が来て使うことを想定していましたが、島民の方たちも含めて使ってもらい、みんなで話したり交流したりする温かい場が生まれればと思っています。
人生にも影響を与えた経験。
—4年生の2人にとって、この活動の経験は大学生活の中でどんな位置付けですか?
渡部 就職活動にも生きましたし、何より将来の方向性を見せてくれたので、自分の人生にとってすごく貴重な経験だったなと思います。この経験から一次産業に関わりたいという思いが生まれて、農業協同組合を志望して内定しました。大学に入った時は特に目標もなかったのに、地域の活性化に取り組む活動を通して、自分の方向性を決められて良かったです。就職活動中はエントリーシートでも面接でも、この活動をメインにすると興味を持ってもらえて。僕にとって自慢できるというか、強みになった経験でした。
市川 僕にとっても天売島の経験は、かなり影響したと思います。内定先は、農業・酪農関係の専門商社。そもそもは北海道、地域に貢献することを考えて金融系を志望していたのですが、活動の経験からも、別の方法で地域に貢献できると考えてこの会社を選びました。通算3年間、活動に関わって、毎年いろいろな経験させてもらったこと自体が収穫でしたが、個人的に一番大きかったのは人のありがたみ、人とのつながりを身に染みて感じられたこと。最初の年は何も分からない状態ながら先輩や同期の仲間と協力して店ができて、冊子ができて。学生でも頑張ればこんなことができるんだ、と感激しました。2年目は代表として活動したことで、学生の力ももちろんですが、ほかの皆さんがいなければこんなにいろいろなことはできなかったなと、人とのつながりの強さがもたらす力を実感できました。
渡部 僕も、活動を通していろいろな人に会い、話してきた経験は大きかったですね。もともとは人と話すのがあまり得意ではなかったんですが、少しは改善できたように思います。活動資金として財団法人の助成金を受けたりしたので、そのプレゼンテーションの機会もありましたし、活動報告など人前で発表することも多かった。そうしたことも、就職活動に役立ったかなと思いますし、これから社会人としての自信にもなりそうです。
天売島との絆をこれからも。
—今後、この活動がどんなふうになっていったらと思っていますか?
市川 メンバー募集の説明会などがコロナの影響でできなくなってしまった中、活動を引き継いでくれる後輩がいて本当に良かったです。現段階ではメンバーが少ないので、できることは限られると思いますが、僕たちがやってたきことにあまりとらわれなくていいのでは。やっぱり学生が「本気でやりたい」と思っていることがすごく大事。その気持ちを、島民の方や先生たちが手助けしてくれるわけなので、前年もやったからこれをしなければならないというのではなく、これまでの成果も生かしつつ、今、自分たちができること、やりたいことを続けていってほしいなと思います。
渡部 自分も同じです。やりたいことをやってほしい。島民の方たちとのつながりは断ち切ってほしくないので、関係性を築きながら、やりたいことに熱意を持って取り組めば、皆さんが協力してくれると思います。せっかくここまで島の方と絆をつくれたのに、これから活動がどうなっていくのか、メンバーが少ないのは僕も気がかりです。活動が少しずつ認知され、定着してきた手応えも出てきましたから、終わらせたくないなという気持ちがあります。コロナが落ち着いたらぜひメンバーも増やして、活動していってほしいです。
森下 活動が長期的に続いていくようになればと思っているので、そのためにもサイト作りはすごく重要だと考えています。長い目で見た時に、天売島にとってためになること、役に立てることで、自分たちには何ができるかを見つけることからやっていきたい。島民の方たちとも触れ合いながら見つけていきたいので、状況が改善して、天売島にもっと行けるようになるのを楽しみにしています。「てん」のサイトでは、レンタルスペースを予約できる機能のほかに、天売島の観光情報などともリンクさせて、気になったらすぐに見てもらえるようにする予定です。レンタルスペースは、これまで飲食関係や地元高校生の音楽ライブなどに利用されていますが、外から島に来た人たちにも、島の人たちにも使ってもらって、例えば写真展などにも活用してもらえたらと考えています。
渡部 島民の方からも使いたいという声を聞きましたから、そういうニーズもあると思うので、島の中の人も外の人も使いやすいスペースになればいいですね。
市川 「てん」は、自分たちが島にいない時にどう使っていくかが課題で、少しずつ利用されるようになってきてはいましたが、不十分なところもあったので、サイトを通じて利用が広がっていったら本当にうれしいです。それと、現状では難しいですが、実際に現場にいくことも大切にしてほしい。直接会うことで伝わってくるものがありますし、島民の方と交流して、どういうことを思っているかを聞くのはすごく大事だと思います。
渡部 島に行って、僕たちの活動の感想を聞けたりするとうれしかったですね。大学の中にいるだけでは出会えないたくさんの方たちと交流できることが、この活動の最大の魅力だと思います。
冊子「移り変わる天売島」[てうりたび」を経済学部ウェブサイトで公開中
https://econ.hgu.jp/program/efforts/local-collaboration-fieldwork.html
https://econ.hgu.jp/program/efforts/docs/fieldwork_seika_01.pdf
https://econ.hgu.jp/program/efforts/docs/fieldwork_seika_02.pdf
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