03
25 2021

<TOPIC 工学部 社会環境工学科> 紙を切って、組み立てて、 模型の橋から見えた土木の世界。

力によって変形しにくい三角形を基本にした構造のトラス橋は、身近に見られる橋の形状です。工学部社会環境工学科2年次の授業「構造力学Ⅰ・演習」では、横30cm・高さ10cm程度のトラス橋の模型をケント紙で作り、重りを少しずつ増やしてぶら下げる実験を行いました。事前に計算式を学んで、どこまで重りをぶら下げると模型に破壊が起こるのかを予測し、それを確認するのが実験の目的です。実験に参加した小野寺さんは、そこでどんなことを学んだのか。授業を担当する金澤先生とともに、話を聞きました。

工学部社会環境工学科 講師 金澤 健 × 工学部社会環境工学科 2年 小野寺 凱生(札幌日本大学高校出身)

トラス橋のメカニズムを知る。

—まず、先生がこの授業のねらいとしたところを教えてください。

金澤 「構造力学」の授業は、一般的には座学形式ですが、学生が自分で手を動かして、見て、考える機会を与えたいと思って実験を取り入れてみました。トラス橋が力に耐えるメカニズムの理解が授業の目的の一つで、その計算方法は座学でしっかり教えていきます。トラス橋は、基本的には三角形の組み合わせでできています。四角形だと力によって変形してしまうのですが、三角形は変形しにくいため、三角形をいくつもくっつけてできているんです。今回の実験では、まずケント紙でトラス橋の模型を作るところから学生にやってもらいました。そういうものを作る機会はなかなかないので、学生たちは苦労したようです。僕も作ってみて思ったんですが、紙を真っ直ぐに切る作業一つとっても大変なんですよね。そうしたことも含めて、工学部の学生なのだからやってみてほしかった。模型も綿密に作らないと、計算が合わなくなります。実際の部材には正確性が求められるということも、自分で手を動かしてみると分かるわけです。

—実験をしてみて、学生の皆さんの反応はいかがでしたか?

金澤 紙製の橋がどこまで持つんだろうと、関心を持って見ていたようです。ただ、今回が初めての実験だったので、思い通りにならないだろうと予想はしていたんですが、やはりそうでしたね。こうした橋にかかる力は、引張か圧縮です。引っ張られると壊れないんですが、圧縮されるとグニャッと曲がる。これを座屈といいます。計算によって、橋の部分によってかかる力が引張なのか圧縮なのかが分かります。その上で、座屈が生じるおもりの重さを予測する計算を学生にしてもらいました。計算では100gぐらい重りをぶら下げた時に座屈する予定でしたが、実際は倍以上の荷重に耐えられてしまいました。たぶん座屈で壊れてしまう前に、大きな力がかかる支点が先に曲がってしまうという状態になったからなんですが。ただ、失敗も含めて見せるのは、大事なことかなとも思っています。

目に見えた「力」。

—小野寺さんは、実験ではどんな役割をしたのですか?

小野寺 5人1 組でグループをつくって、トラス橋の模型を作る担当と、その破壊を予測する計算の担当に分かれて進めました。僕は模型作りを担当したんですが、いざ組み立ててみるとそもそも橋が歪んでしまっていて。紙をきちんと測って切って作ったつもりだったけれど、精密さに欠けていたようです。それが実験結果に影響すると先生に指摘され、結局、どのグループの模型も精密ではなかったので、先生が作った模型を使って重りを下げていく実験をしました。僕は模型に重りを下げる手伝いをすることになり、10gから始めて様子を見ながら重りを増やしていきました。紙の模型なのに、重りが増えていってもこんなに耐えられるんだ、と意外でした。ただそのうち、橋の根本部分が少しずつ曲がってきてしまって。計算した通りにはならなかったけれど、橋が自重の何倍もの荷重に耐えられることに、むしろとても驚きました。

—実験をしてみたから、学べたこともあったようですね。

小野寺 はい、そう思います。トラス構造については授業で習ってきましたが、模型を作って実験してみたことで、これだけの強度を持っているんだということが目に見えて分かりました。実際に目の当たりにすると納得度が違うんだということを、改めて感じました。今回は模型を使った実験でしたが、いつも何気なく通っている橋にもこんなふうに力がかかっていて、もし欠陥があればいとも簡単に崩れてしまうことがあるんだということも実感できました。

大切なのは考える過程。

—小野寺さんにとって、今回のように授業に実際に参加することは、理解を深める上で大切だと感じますか?

小野寺 もちろん、そうです。この実験もそうでしたし、直接見たり聞いたりした方が、僕にとっては分かりやすいですね。特に構造力学は、土木工学には欠かすことのできない大事な授業の一つなので、ちゃんと理解しなければと思っていました。ただ、最初は自宅でのオンライン学習だったこともあって、苦戦していました。先生が質問できる機会をつくってくれたので、できるだけ聞きに行って黒板なりノートなりを挟んで対面で教えてもらうようになると、徐々に分かるようになっていきました。その上で実験を経験したことで、理解できたという手応えがさらに強まった気がします。

金澤 オンライン授業の期間、質問があったら対面でも対応するので聞きたい人は来てくださいというふうにしていたんですが、小野寺くんは毎週のように質問に来て、すごく熱心でしたね。僕は、学生たちに考える過程を示すために、今回のペーパートラス橋のように実際に見せたり、手を動かしてもらったりする機会を授業の中に組み込めたらと考えています。答えを与えるのではなく、考える過程を示すのが授業だと思っていますから。こういうふうに考えているんだよ、ということを分かってもらいたいですね。

小野寺 実際に見て、体験して、自分で考える場面をつくってもらった方がよく理解できると今回の実験で実感しました。そういう機会が、今後ももっとあればいいなと思います。実際にトラス橋を見たことはありましたが、実験をしてからは、もっと気にして見るようになりました。そもそもこの学科で学び始めて以降、道路や川、橋などの見方が変わったように思います。自分たちの安全を守るためのものであると同時に、周りの植物や動物にも配慮して作られているんだなということにも気づいたり。将来は、身につけた知識や技術を生かして土木分野で仕事をしたいと思っていますから、今、そのために有意義なことを学べているという充実感があります。

工学部社会環境工学科 講師 金澤 健 × 工学部社会環境工学科 2年 小野寺 凱生(札幌日本大学高校出身)

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