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24 2022

「ぶっ飛んだ発想」で ゼミに臨もう。

経済学部経済学科 鈴木 雄大 准教授

鈴木先生は学生に、一般的ではない「変わった考え」、もっと言えば「ぶっ飛んだ発想」を期待しているといいます。「自分で考えて、決めて、取り組んでいくことが、大学で一番身につけてほしい姿勢。だから、ゼミのテーマは学生がやりたいことを優先。経済とか、僕の専門の統計を優先しなくていい(笑)」。ほかにはないような面白い考えを何よりも歓迎しています。

「統計」の活用の仕方を知る。

ーー先生の専門は「経済統計学」。経済学で統計を学ぶ意味はどんなところにあるのでしょう?

分かりやすい例で言うなら、「エビデンス」という言葉が最近よく聞かれますが、そのためにデータを持ってきたり、ディベートの時に使ったりするものとしての意味があると思います。あるいは、「失業率」という言葉を聞くと、仕事をしていない人とか仕事に就けない人みたいなイメージをすると思いますが、実際の調査には三つの要件があります。調査週間中に全く仕事をしなかった、仕事があればすぐに就ける、実際に仕事を探す活動をしていた。このすべてに当てはまる人の割合ということで、仕事を探すのは諦めたといった人は入らない。そうしたことを知った上で数字を見るのと、イメージで見るのとでは意味が違ってくるので、統計がどのように作成されているのかを知ってもらいたい。それと、どういうジャンルでどういうことを調べているのかを頭の隅に置いてもらって、何かで必要になった時にあのデータを調べてみようというふうにつながればいいかなと思っています。

ーー「消費者物価指数」は適切な使い方をされているのか、が研究のテーマですよね。

はい。消費者物価指数は、サッカーで例えるならどのポジションもできるけれど80点の選手みたいなもの。このポジションしかできないけれど100点、というのが通常のプロフェッショナルですよね。でも消費者物価指数はそうではなくて、どこでもはまるけれど100点ではなく80点。そんな使い方をしているイメージなんです、僕の中で。ですから、それが絶対にダメというつもりはないんですが、国の物価動向を測る指標や年金、生活保護費の改定基準などいろいろなことに使われているものなので、目的に応じて、より適切な指数を作ろうと思えばできるんじゃないかと考えています。

ーー適切ではない使い方の例というのはあるんですか?

僕が思う例では、年金の物価スライド制に利用されているのは、ちょっと違うんじゃないかなと。消費者物価指数の計算は、品質一定という考えをとっています。例えば20万円のパソコンがモデルチェンジして、同じ値段で売っているけれど性能は2倍になったとすると、性能あたりの単価は半分ということになるので10万円と捉えるんです。そうすると、半額になったという話になってしまう。そんなふうに計算されたもので、物価が下がっているから支給するお金を減らしますというのは、目的とずれているんじゃないかと思うんです。

ーー統計にはそういう面もあると、知ってほしいですね。

そうなんです。数字だから正しいとか、国が出しているものだから正しいだろうとか、あるいは逆に、どうせ国は都合のいいものしか出さないと思うとか、自分で考えず感覚的に判断してしまうのではなく、統計の中身をきちんと見て、活用したり批判したりする姿勢を持ってくれればと思っています。

テーマはとにかく「やりたいこと」。

ーーゼミナールのテーマは、学生が自分で選ぶのですね。

1年次の基礎ゼミのテーマは、経済学とかは考えなくていいから、とにかくやりたいことをやってくれと言っています(笑)。結論がどうなるかは分かりませんが、自分でこういうことをやろうと決めて、そのためにどうしようかと考えて、最終的に何か自分なりの答えが出れば、それでいいと思っています。

ーー2年次からのゼミナールは、公的統計を利用することが必要?

公的統計を利用してくれればとは思いますし、もう少し経済学の方向へ絞ってはもらいますが、やりたいことをやってくださいという基本方針は変わりません。その方が楽しいし、モチベーションにもなる。例えば現在の2部のゼミ生たちは元野球部なので、野球におけるデータの利用をテーマにしています。テーマを決めたらグループで文献・統計データを調べ、報告、議論、ゼミ論文にまとめる、というのが一連の流れ。僕は発表を聞いて助言していきますが、学生にとって一番きついのは文章を細かく直されることだと思います。社会人になる前に、そういう機会があってもいいかなというつもりでやっています。僕も学生時代に指導を受けたことが、役立ちましたから。

ーー「社会科見学」も盛り込んでいるとか。

これは、時間の自由が利く学生のうちにあちこち行ってらっしゃいみたいなこと。コロナ禍以前にはサッポロビール博物館などに行きました。見学先を学生たちで見つけてくることがポイントです。自分で考えて、決めて、取り組んでいく姿勢が、勉強とは別に大学で一番身につけなければならないことだと思っています。どんなことでもそうですけれど、自分で考えないと、何かあった時に周りに原因を求めるという発想になってしまう。

ーーとりあえずやってみる姿勢も持ってほしいそうですね。

大学では、人に迷惑をかけない範囲で、やりたいことをどんどんやった方がいいと思うんです。僕は、変わったことをやったり考えたり、そういう学生の方が面白いんですよね。結果が出ないのは悪いことみたいに学生は捉えるんですが、その原因が分かれば、それはそれでいいじゃないですか。失敗を失敗と捉えるかどうかは本人次第。完全な失敗というのは、ないんじゃないですかね。それでうまくいかなくても、別のところに応用が利くはずです。

経済学部経済学科 鈴木 雄大 准教授
[専門分野]経済統計 [主な担当科目]経済統計学

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