夢や将来の希望、生活にも 「経営学」はリンクする。
あなたの夢や将来への希望は、どのようにして生じたものでしょう? 「経営組織論」を専門としている中村先生は、そうした夢や希望を抱くまでのプロセスの研究をテーマにしています。学問的な理論を、日常の中で使うことができるのは経営学の面白さの一つ。社会に出てからの心構えとして役立てられることが、学びの中にたくさん盛り込まれています。
希望の道で活躍してほしいから。
ーー「夢や希望を抱くまでのプロセス」ということが、研究対象になるんですね。
高校生なら、夢や希望と聞くと大学や就職先を思い浮かべたりするかと思います。私の場合は、一番の興味・関心は組織の研究ですから、組織の中でのキャリア形成やキャリア開発、特に女性の昇進や昇格をテーマにしています。例えばあなたの夢や希望は、周りの環境、特に人との関係性によって形作られたのではないでしょうか。これまでの研究では、組織ではロールモデルやメンターの関わり方が重要だと言われてきましたが、組織内にロールモデルがいるかと聞かれたら、いるという方もいないと答える方もいるでしょう。女性の場合、そもそも女性の先輩が少なかったり、ロールモデルが重要だと言われているから組織側が準備したロールモデルはいるけれど、そういう人と比べるとちょっと違うと思ったりして、ロールモデルがいないと答えることがあります。では、ロールモデルがいない中で昇進を志したり、仕事を頑張りたいと思う時、周りにどんな人がいたのか、その人とどういうふうに関わっていたのかを研究しているところです。
ーーそうした影響を与える人は、社内に限定されるものなのですか?
そこに大きなポイントがあって、社外の人に注目してみましょうというのが私の考えです。社内でもこの人のこういうところがいい、でもこういうところは見習えないということもありますし、今までのロールモデルとは違う社会的関係性に視点を変えて見てみましょうというのが私の研究です。
ーー研究はどのようにして進めていくのでしょう?
対象者へのインタビューが中心です。その方が働いている企業にはどんな役職があるのか、女性が活躍できている組織なのかどうか。あるいは、ずっと取り組んでいるけれど指導的立場の女性は少ないという大企業の方など、さまざまな対象者に話を聞かせてもらいます。
ーー先生自身も、企業勤務の経験があるそうですね。
ええ。大学を卒業して2年ぐらい勤めていましたが、あまり女性が活躍しているところではなかったんです。人が活躍するのに男性も女性も関係ないし、能力がある人がいろいろ言われずに頑張れる方が組織にとってもいいんじゃないか。そもそも女性のキャリアは批判されなきゃいけないものなのか。そこから、こういう研究をしたいと思いました。今は多様性が大切にされる社会ですし、女性だけでなくいろいろな方たちが頑張りたいと思っている時に、足を引っ張るのではなく、みんなで活躍できた方がいいよなというのが基本的な考え方。一人ひとりが希望する道を追求できるのが、一番いいですよね。
1+1=2?
ーーゼミナールの進め方を教えてください。
組織論をテーマに、教科書を輪読して学生が担当箇所のプレゼンテーションをしたり、企業研究や論文の読み込みなどを行っています。学生の「学びたい・知りたい・やりたい」という気持ちを尊重しているので、学びの方法も内容も学生からの声に合わせています。北海道が創業地または本社がある企業を対象にした企業研究では、3グループが柳月、ツルハドラッグ、HTBをそれぞれ取り上げて発表しました。なぜその企業を選んだのか学生に聞くと、広告の作り方や番組編成などの視点が出てきて、いろいろ見ているんだなと感じられたのも面白かったですね。
ーーゼミを通してどんなことを身につけてほしいですか?
目の前で起こることに対して、深く思考できるようになってほしいと思います。目の前のものが必ずしも正解ではないですし、そのまま受け入れるのではなく、「もしかして1+1=2ではなく3とか4かも?」という視点があってもいいのでは。世の中のことを斜めから見るのはネガティブなように捉えられますが、時にはそういうことも必要でしょうし、賛成するばかりではなく反対の意見を言ってみてもいいんじゃないかと思うんです。特に大学は、さまざまな文化的バックグラウンドの人が集まるところ。いろいろな視点を獲得したり、意見を戦わせたり、そういうことがしやすい環境にあると思います。
ーーそして、一歩踏み込んでみることが大切だと。
そうです。社会の課題や目の前の出来事に無関心でいれば、それで終わってしまう。誰かがやってくれるし、自分が関わらなくても過ぎていく。見ようとしなければ見えもしなかったりする。でも、ちょっと関心を持てば、これはなんなんだろうとか、自分はどう関われるんだろうとか、考えるきっかけがあると思うんです。無関心って、なんか寂しい。自分の世界も広がらないですし。
ーーそうした目の前の出来事も、経営学と密接に関わっているとか。
自分の目の前で起きることは、経営学で理論化されていることも多いんです。理論というと崇高で揺るぎないもののようですが、実は自分たちの生活にもリンクしているし、見方を変えるといろいろな解釈ができる。経営学では、実務で取り扱われていたものが理論になる相互作用もあるんです。社会学、心理学といった学問を借りながら理論化されることもあるので、社会や組織だけでなく個人の話としても使える理論が多い。私も実際に働いてみて、理論について実感する機会がありました。学生たちが社会に出てから、そういえば大学でこんなことやったなと、ぴんときてくれることがあったらうれしいですね。
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