03
28 2024

<社会環境工学科トピックス> 土とコンクリートの 特性を体感する

社会環境工学科3年次1学期に開講される「地盤・構造材料実験」(社会環境コース必修)は、「土質材料」と「コンクリート材料」の実験を通して、それぞれの特性や試験方法、現場で活きる技術を学びます。「コンクリートの部」では、材料の割合を計算によって求める配合設計から始まり、円柱供試体の作成・試験、長さ1.5メートルの鉄筋コンクリートの梁(はり)を製作し、その壊れ方を観察します。材料を練り混ぜてコンクリートを作る過程で何を感じ、どんな学びが得られたのか。社会環境工学科3年の梅原康成さん、工藤皇さん、福地大輝さんの3人に振り返ってもらいました。

[地盤・構造材料実験参加]

工学部社会環境工学科3年 梅原 康成

工学部社会環境工学科3年 工藤 皇

工学部社会環境工学科3年 福地 大輝

コンクリートの意外な壊れ方に驚く。

―社会環境工学科を選んだ理由を教えてください。

【梅原】高校1年生のときに北海道胆振東部地震が起きました。しばらくして被災地を訪れたときに土砂崩れの現場を見て、土木インフラの世界に興味を持ったのがきっかけです。

【工藤】僕は昔からものづくりが好きで、将来はものづくりの仕事に携わりたいと思っていました。僕も北海道胆振東部地震はよく覚えています。住んでいる地域が清田区(札幌市)ということもあって液状化がひどく、復旧作業を目の当たりにするうちに、土木の世界に興味が湧きました。

【福地】自分は工藤君と家が近いんですけど、やっぱり液状化現象を目の当たりにして地震について考えるようになり、こうならないような対策を考える業界に進みたいと思うようになりました。

左から、工藤さん、福地さん、梅原さん

―3人とも北海道胆振東部地震の経験が、社会環境工学科に進む大きなきっかけになっているんですね。それではさっそくですが、「地盤・構造材料実験」について教えてください。

【工藤】じゃあ、僕から。「地盤・構造材料実験」の授業は全15回(内1回は全体ガイダンス)で、7回は土質材料に関する実験(土質の部)、7回はコンクリート材料に関する実験(コンクリートの部)を行います。「土質の部」は、土の特性を知ったり、分析する方法を学だりします。「コンクリートの部」はセメントや水などの材料から自分たちでコンクリートを作ります。「土質の部」は一人で作業することが多いのですが、「コンクリートの部」は5〜6人の班に分かれて作業をするのが特徴です。例えばコンクリートを練り混ぜる作業では、班の中で役割をうまく分担しないと早く帰れません。なるべく早く終わるようにみんなで協力して作業をしました。

【福地】自分は少し工藤君とは考え方が違っていて、早く帰るよりも結果を重視したいという気持ちが強かったので、班の中には「もういいんじゃない?」と帰りたがる人もいたけれど、「もうちょっと精度を上げたいから粘ってみない?」とみんなを説得する側でしたね。

―何を作成したのですか?

【工藤】円柱供試体という高さ20cmのコンクリートの塊です。水・セメント・骨材(砂や砂利)といった材料をどの割合で混ぜたらいいのか、自分たちで計算して配合設計し、実際に供試体を作りました。材料を練って混ぜて流動性や空気量を調べてから円柱の筒に入れ、1週間経った後に壊します。練ったコンクリートの「軟らかさ(流動性)」や、完成した供試体の「強さ(強度)」が設定された目標値にどれだけ近づけるか、班対抗で競い合いました。

―作ってみてどうでしたか?

【梅原】この授業の前に座学でコンクリートの作り方については学んでいたのですが、実際にやってみると、材料を練るときの音がめちゃめちゃ大きくてすごくびっくりしましたね。座学で講義を聞くだけじゃなく、リアルでやるとやっぱり違うなって。

【工藤】今までは固まった状態のコンクリートしか見たことがなかったので、イチから材料を練って混ぜてできあがっていくのを見るのは新鮮で、面白かったですね。

―円柱供試体のほかに、長さ1.5メートルの大きな鉄筋コンクリートの梁(はり)も製作したそうですね。

【工藤】はい。鉄筋を組んでコンクリートを流し込んで固め、載荷実験を行いました。鉄筋の入り方が異なる2種類の梁(はり)に力を加えて破壊するんですが、その壊れ方を観察しました。だんだん力を加えるうちに細かいひび割れができるんですけど、そのひびをペンでなぞって追いかけます。

【梅原】ひびがめちゃめちゃ細かくて見つけるのが大変だったよね。でも楽しかった。

【福地】高橋先生から「コンクリートを壊す」と聞いたときには、ジェンガが崩れるみたいに派手に壊れるものだと思っていました。それが、ちょっとずつライトを照らして見ないとわからないぐらい細かいひびが入っていくのを見て、コンクリートのイメージが一変しました。

実験での気づきを、卒研やこれからの人生に。

―コンクリートの実験を振り返ってみて、いかがでしょうか。

【福地】コンクリートを打つのは一人ではできないということを、身をもって感じました。意見が分かれる場面では、それぞれの思いを尊重しながら、班のみんなで同じ方向を目指さなければなりません。声のかけ方や気遣いの大切さを学びました。コンクリートに関しては、これまでは街を歩いていてもほとんど気にすることもなかったけど、コンクリートが石や砂を使ってできているんだということが実験を通して実感できたし、ひび割れができる様子も確認できました。通学中に橋やトンネルを通りますが、「ああここにもコンクリートが使われてるな」とか、「こういうふうにひびが入っているんだ」とか、気になるようになりました。

【工藤】コンクリートの「軟らかさ」や「強さ」、コンクリートが「どう壊れるか」といったことは、座学で学んでいたときは今ひとつピンと来ませんでした。でも、実際に手を動かすうちに腑に落ちる感覚があって楽しかったです。プロセスが見えると、ものづくりって面白いなと改めて感じました。

【梅原】とにかくレポートが大変でしたね。実験で思うような結果が出なかった場合にはその原因を突き詰めて考えなくてはいけません。そもそも計算が間違っていたのか、それとも材料の混ぜ方が足りなかったのか、ミキサー(練り混ぜる装置)に入れるタイミングが悪かったのか……。明確な答えが用意されていない中で、ひたすら考えてレポートを書きました。考えをうまくまとめることには苦手意識がありましたが、高橋先生にみっちり鍛えられました(笑)。卒業研究もそうだし、社会に出てからも、自分の考えをまとめる機会が増えると思うので、考えをまとめる習慣が少し身についたのは良かったかなと思います。

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