評価の基準を 「自分」に置いたら ワクワクに変わった。
ものづくりが好きで建築学科に進んだ吉田さん。学科の課題に取り組むうちに、「他人に評価されやすいもの」をつくっていたことに気づきます。そこで「評価の基準を他人から自分に変えたら、つくることがラクになった」と晴れやかに話す吉田さん。現在は課題制作をはじめ、旅や雑誌づくりなど心が沸き立つ経験を重ねています。
自分のものさしを持つ。
小さいときから机に向かうよりも手を動かすことが好きで、建築なら模型をつくる授業もあるから楽しく学校に通えるだろうと思って建築学科を選びました。ただ、それまでは絵を描いたり、ものをつくったりすることが好きなわりに、最後まで続かなくて、下描きだけで終わっちゃうようなことが多かったんです。それが大学で課題として出されるようになってからは、「やらなくちゃ」という環境に身を置いたことで、完成までやり切る力がついたことは自分にとってよかったのかなと思います。
学内コンペ(1年次2等賞、2年次1等賞)や課題で作品が評価されるのはうれしいことでしたが、だんだんと「自分がつくりたいもの」をつくっている感覚が薄れていることに気づきました。自分では良い作品をつくっているつもりでも、心のどこかで評価を気にして「説明しやすいもの」になっていたから。3年生になって一度評価が下がったときに、「他人の評価に右往左往するばかりで、自分の中に評価基準がないとこの先厳しいぞ」と思ったんです。
それからは、自分が本当につくりたいもの、つくっていてワクワクするものをつくるように心がけています。だからといって先生の意見を聞かないのではなく、先生の評価を受け止めて直すべきところはきちんと直し、その上で判断の軸を自分の中に置こうと決めました。そう決めて臨んだ次の課題は……、あんまり評価は良くなかったけれど、すごく気持ちがラクになったし、完成したときに楽しかったと思えたので、一歩前に進めたのかなと思います。
お祭りをデザインしたい。
建築学科を選んだもう一つの理由は、建築を学べば旅が楽しくなると思ったからです。昔から旅行が好きで、先日も一人で台湾へ行ってきました。旅先に台湾を選んだのは現地の料理にもひかれたけど、寺院建築を見たかったからです。大学の授業で日本の寺院建築について学び、海外の寺院とはどう違うのか、何か共通点はあるのか、見てみたかったんです。
実際、屋根の造りや柱の装飾を間近で見て、素晴らしい仕事に感動したんですけど、それだけではなく、寺院を囲むように夜市が形成されていたり、伝統建築には似つかわしくない近代的な電光掲示板が付いていたり、建築を通していろいろな発見がありました。台湾旅行の余韻が冷めないうちに、自分だけの旅行雑誌を作ろうと思っています。自分が訪れた場所とか、台湾の街並みを歩いて気づいたこととか、iPadを使ってまとめているところです。昨日もそのために、カフェに何時間もこもっちゃいました。
卒業後の進路は、正直まだ明確ではありません。全然褒められたことじゃないけれど。ただ建築は、建物の設計だけではなく、インテリアや家具をつくったり、もっと大きな規模の何かをつくったりすることもできるし、いろいろな広がりがあるから面白いですね。やってみたいのは、お祭りのデザインです。やぐらやステージを設計したり、屋台やテントを配置したり。お祭り全体を手がけてみたいですね。お祭りって、都市の縮図だと思うんです。人の集まる場所があって、人が行き来する動線があって、そこにトイレのように必要なものも配置していく。私が手がけたその場所で、音楽に合わせて踊ったり、お酒を飲んで解放されたり。そういう心が沸き立つ場をつくることができたらいいなって思います。