03
28 2023

<TOPIC工学部建築学科> 「現場」を経験できて良かった。 心の底からそう思える。

建築学科は2017年度から毎年、岡本浩一研究室を中心として沼田町の空き家をリノベーションする活動に取り組んでいます。2019年度には本学と沼田町の包括連携協定が締結され、まちづくりへの貢献を目指すとともに、学生が実体験を通じて建築や地域に向き合う機会として、この活動が継続されています。2022年度のリノベーション対象物件は、築50年ほどの木造2階建て住宅で、町外からの移住希望者が実際に移住した人や町民の皆さんと交流できる場づくりがテーマ。2階には北海学園大学の活動拠点を設けることも盛り込まれ、岡本研究室に所属する学生7人と後輩学生、卒業生も協力して作業が行われました。リーダーとしてプロジェクトを引っ張った今さんに、約5カ月にわたる活動について振り返ってもらいました。

工学部建築学科4年 今 高志(青森県立青森高校出身)

リノベーションがやりたい!

–そもそもリノベーションに興味があったそうですね。

【今】 はい。僕はリノベーションがやりたかったので、研究室は岡本先生のところしか考えていませんでした。小さい頃から建物を見るのが好きでしたし、自分の考えたものが実際に建物になるのはすごいことだなと思って建築を志したのですが、大学で学ぶうちに、僕は図面を引いたりするより、自分で体を動かして作業をする方が好きだなと気づいたんです。それで、4年次に所属する研究室は実際の作業ができるところに進みたいと思っていたので、リノベができる岡本研究室しかないと希望しました。

–活動はどのようなことから始めたのですか?

【今】 まず4月末に沼田町へ行って、対象物件を実測調査するところからスタート。それを図面にして、町から提示された方向性に沿って研究室のメンバーが3人ずつ2グループに分かれて設計案を考えることになりました。リーダーの僕はどちらの話も聞きながら、一緒に相談していきました。そうしてまとめたのが、開放感のある吹き抜け空間が特徴的な「解放」と、和のイメージを取り入れた「わ」の2種類。地元関係者の前でプレゼンテーションした結果、「解放」が採用されることになりました。先方から広い階段や空間が良いという感想をもらえたので、そこがポイントになったのかなと思います。もともとは狭くて急な階段が付いていたんですが、階段の場所を変えて広くし、吹き抜けにしました。階段を作るのは難しいと言われていた通り、作業を始めてみると複雑で繊細な計算や作業が多くて苦労はすごく大きかったです。でも、無事に完成させることができて、その部分が今回のリノベの見どころの一つになりました。

–リーダーとしては、どんな役割を担っていたのですか?

【今】 現場で指揮を執るみたいに聞いていたんですが、もちろんそれだけではなくて、めちゃめちゃ作業しました(笑)。ただ、僕はそれがやりたかったので、全然苦にはなりませんでした。2階の腰壁施工を担当した時には、予定と変更があり、その場で測って木材を切って組み立てて、という経験もしました。通常は、大学で設計図を書いていって現地で作るという感じなんですが、作業しているうちに、こうした方がいいんじゃないかみたいなアイデアが急に出てくることもあって。先生やみんなと話してその方がいいとなったら、僕も性格的に行っちゃえ!となるんですが、それがまた苦労のタネになることもありました(笑)。後輩も卒業した先輩たちも手伝いに来てくれて、多い時は20人ぐらいになったことも。人のやりくりや工程管理もリーダーの担当なので、その日は何人でどんな作業をしてもらうかも決めていきました。

 –特に苦労したことというと?

【今】みんなの協力もあって、それほど苦労は感じませんでした。ただ、途中で工程が予定より遅れてしまった時は、納期までに終わらないんじゃないかと心配で心配で。日程を急きょ追加して作業に行き、計5回の沼田町での作業で9月の納期に間に合わせることができました。ほかに苦労したといえば、予算の面ですね。自分たちで材料を発注して予算内で収めなければならないのですが、今年は値上がりがひどくて大変でした。ですから、木材を切り出して余った部分とか、不要な箇所を解体した時に出た廃材などもできるだけ活用する工夫をしました。今回のリノベの見どころは、階段や吹き抜けもそうですが、新しく入れた柱や筋交いなどにも注目してほしいです。一般の人がパッと見ても分からないかもしれないんですが、耐久力を高めるために、そういうところにも手をかけました。この部分については、大学で構造担当の先生のところに話を聞きに行きました。それぞれの分野の専門家の先生がいるので、何かあれば教えてもらえるという大学ならではのメリットも心強かったです。

まち、ひとへの愛着も。

 –完成した時は、どんな気持ちになりましたか?

【今】 間に合わないんじゃないかと思ったこともありましたから、無事に完成して本当に良かったですし、「できるもんなんだな」と感動しました。今回のプロジェクトで初めて沼田町に行ったのですが、終わる頃にはすごく愛着が湧いていて、「ああ、終わっちゃったな」と寂しくもありました。担当してくださった役場の方とは親しくなっていましたから、もう会わなくなるんだと思うとそれも寂しくて。一つ年上で話しやすく、いつもすごく親身になってくださって、必要なものがあるとすぐに走り回って用意してくれたり、とてもありがたい存在でした。最初から見ていた役場の方たちは、どういう状況から始まったのかを知っているので、完成した時はよくやったねと言ってもらえました。研究室のメンバーも出来上がった時はすごく喜んで、やっている時はしんどいとも言っていたけれど、終わってみると寂しくなったようです。8月に行われた「夜高あんどん祭り」で、あんどんを一緒に担がせてもらったのもすごく楽しい思い出です。そうしたことにも参加できて、町民の皆さんと触れ合えたことでも、沼田町に対する愛着が深まっていったと感じます。

–実際のリノベーションは、いかがでしたか?

【今】 経験して良かったなと心の底から思えます。最初は本当に何も分からない状態だったので、めちゃめちゃ大変ではありました。例えば木材のサイズはあらかじめ決まっているものだけれど、どんなサイズがあるのかも分からないし、床を作ると言われても構造がどういうふうになっているのか分からない。普通に大学生活を過ごしていては分からないだろうなということが経験できて、すごく貴重な機会になったと思っています。作業を進める場合も、先生からの一方的な指示ではなく、僕たちが調べたり考えたりした案を持って先生のところに行くと、こっちの方がいいんじゃないとか、さらにこうすればとか、お互いに意見交換しながらどんどん完成に近づけていくという感じでした。最後の方になると、僕たちの持っていった案を先生がいいねと言ってくれるようになって、成長の手応えがあったのもうれしかったです。

–現場ではやはりチームワークが必要?

【今】 めちゃくちゃ大事だと思います。もう一つ大事だと感じたのは、事前の準備。それをしっかりやっておかないと、現場で大変な目に遭うので、大学にいる間の作業はすごく重要でした。でもそれができていると、現場に行ってもスムーズで、自分たちが楽になる。これも、経験しなければ分からないことでした。そしてやっぱり、僕は外で体を動かしている方が好きだなと感じましたから、卒業後はそういう仕事に就ければと思っています。

-これからこの場所は、どう活用してもらいたいですか?

【今】 1階のスペースを広くしたことが大きなポイントだったので、そこを活用して移住希望者をはじめ、町民の皆さんや学園大生も含めて、たくさんの人たちが集まる交流施設になってくれるとすごくうれしいです。とにかくどんどん使ってほしいですね。

–最後に改めて、この活動の魅力を教えてください。

【今】 勉強になるのはもちろんですが、先輩・後輩と交流できるのも魅力だと思います。僕にはそれが、すごく楽しかったです。在学中、実際に作業ができる機会はそんなに多くないと思うので、本当に貴重な経験ができます。特に、一軒の家全体を見て、関われるような経験はなかなかできないので、そこは大きいと思います。後輩の皆さんもリノベーション・プロジェクトにぜひ参加して、頑張ってみてほしいです。

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