【建築学科トピックス:卒業研究】 キャンプ場を ヒンメリ揺れる アートの森に。
4年次には興味・関心に合わせて研究室を選び、それぞれのテーマで卒業研究を行います。三澤温先生の研究室を選んだ武永蒼依さんと髙溝ありささんのテーマは「アートでまなびの森をつくる」プロジェクト。共立女子大学・東京電機大学と連携したこのプロジェクトで、二人は環境系の視点から北欧伝統の飾り「ヒンメリ」を制作しました。キャンパスを飛び出して取り組んだ卒業研究を振り返ります。
[三澤温研究室所属](写真左から)
工学部 建築学科4年 武永 蒼依さん (北海道北見柏陽高校出身)
工学部 建築学科4年 髙溝 ありささん (北海道札幌厚別高校出身)
私たちらしいヒンメリを作ろう。
——なぜこのテーマを選びましたか?
【髙溝】卒業研究の説明会で三澤先生から、共立女子大学・東京電機大学との3大学連携で、栃木県のキャンプ場を舞台にした「アートでまなびの森をつくる」プロジェクトが始まるという話を聞きました。共立女子大学は意匠系、東京電機大学が構造系、北海学園大学は三澤先生の専門である環境系を担当しますが、環境装置としてヒンメリを飾るアイデアを聞いて面白いと思いました。
【武永】本州へキャンプに行けるのも楽しそうだなって。
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——ヒンメリとはどんなものですか?
【武永】フィンランドの伝統的な装飾品で、光のモビールとも呼ばれています。麦わらに糸を通して多面体を作り、それをつなぎ合わせてさまざまな形にします。わずかな空気の流れでゆったりと回り、壁や床にヒンメリの影を映します。太陽と豊かな実りのシンボルである麦わらを使うので、幸せを運ぶお守りとしてクリスマスや結婚式に飾られるそうです。
今回は、風鈴が涼しさを感じさせるように、光のゆらぎで涼しさや安らぎをもたらす「光鈴(こうりん)」となるよう森の中にヒンメリを設置しました。
——3大学でどのように連携したのですか?
【髙溝】4月から毎週1回、Zoomで打合せを行いました。共立女子大学が全体計画を考えて、東京電機大学はジャングルジムのように子どもたちが遊べるストラクチュラル・アートを作り、私たちは共立女子大が考えた「ヒンメりんネル」という木枠のトンネルに飾るヒンメリの制作を担当しました。森の中のアート作品ということで、できるだけ自然素材を使うことをテーマにしました。
【武永】他大学の作品に比べて私たちのヒンメリは小さく繊細なので、その中でも私たちらしさを表現できるよう、八面体だけではなく星型のヒンメリにしたり、糸の長さを変えて風をイメージしたり、カラーフィルムやガラスの偏光板で光の演出を加えて、小さくても存在感が出るように工夫しました。
刺激を受け合い、より良い作品へ。
——最終的にヒンメリを取り付けるため、現地へも行ったんですね?
【武永】はい。9月12日から14日までの3日間、栃木県のキャンプ場でヒンメリの設営を行いました。天気が悪く、ほかのメンバーの作業も予定通りに進んでいなくて、14日朝の出発時刻ギリギリまで作業をしました。想像以上にやることがいっぱいで、キャンプを楽しむどころじゃなかったですね。実際に取り付けたら、イメージした通りに影が地面に映らない場所があったので、作品の取り付け場所を入れ替えたりしながらアレンジしました。
【髙溝】当初はヒンメリの乾燥を防ぐために補強材を塗布しようと思っていたのですが、東京電機大学の方から「せっかく自然素材で作っているのだから、人工的なものを使うのはどうかな?」と意見をもらい、補強材を使わず、もし乾燥でヒンメリが壊れたとしても、壊れていくプロセスも楽しもうということになりました。アイデアや刺激をたくさんいただき、より良い作品ができたと思います。
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——卒業研究全体を振り返って、いかがでしょうか。
【髙溝】毎週の打合せでは3大学それぞれアイデアを出し合うのですが、共立女子大学の皆さんのスライドがいつもすごくて、刺激を受けました。私たちも負けないように発表のたびにプレゼンする内容を二人で話し合い、頑張ってスライドを作りましたが、それはすごく良い経験になったと思います。
【武永】「ヒンメりんネル」にヒンメリを設置したとき、周りの皆さんに喜んでもらえたことがうれしかったです。これまで実習で制作した作品は一人で作ることがほとんどでしたが、他大学の方と一緒に納得いくまで話し合い、作り上げていく過程は勉強になりました。形に残る卒業研究に取り組むことができてよかったと思います。
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【髙溝】私たちの卒業研究はこれで一区切りですが、「アートでまなびの森をつくる」プロジェクトの作品はそのままキャンプ場に設置され、子どもたちの遊び場になっています。キャンプ場では私たちのヒンメリの作り方を元にヒンメリ制作のワークショップを開催していて、子どもたちが作ったヒンメリも「ヒンメりんネル」に飾られていくと聞いています。いろんなヒンメリが森に増えていくことを想像するとワクワクしますね。