03
04 2025

法律は 人々を幸せにする ためにある。

法学部 法律学科 四ツ谷 有喜 教授

朝起きてから夜寝るまで、私たちの生活に深く関わる民法。その民法を学ぶことは法曹(裁判官・検察官・弁護士)や公務員を目指す人だけでなく、誰にとっても「社会を生き抜く上で役に立つ」と四ツ谷先生はいいます。また、法律を学び、考え、議論することを通して、論理的な思考や文章力も身につきます。

法律を学べば、社会を生き抜く力も、論理的思考も身につく。

——民法とはどんな法律でしょうか。

民法は、暮らしの基礎となるルールを定めた法律です。コンビニで物を買ったり、部屋を借りたりするときなど、民法は日常生活全般に関わる利害関係の調整について定めています。皆さんが思いがけない事件や事故に遭ってしまったときの被害の弁償、夫婦や親子間の関係、相続なども民法で取り扱います。ですから民法を学ぶことは、社会を生き抜くためにも大いに役に立ちます。

——民法を学ぶことは、法曹を目指す人だけではなく、さまざまな人にとってメリットがあるんですね。

はい。本学には公務員志望の学生が多くいますが、特に公務員を目指す方は学んでおいて損はないでしょう。公務員試験に関わるだけではなく、例えば道庁や市町村役場に入ってからも民法を使うという話はよく聞きます。

また、民法に限らず法律を学ぶことは、条文を根拠としながら物事を論理的に考えるトレーニングになります。法律の条文は抽象的です。一方で実際の出来事は具体的です。ある具体的な事例に対して、どの法律のどの条文を適用するか。それを考えて、なぜその条文に当てはまるのかを人に伝えるには、要点を明らかにし、筋道を立てて説明することが求められます。そうした作業を通して論理的な思考や人に伝わる文章を書くスキルが身につきます。たとえ将来的に法律に関わる仕事に就かなくても、例えば会社のルールに照らして物事を考えたり、社内外の人を説得したりする力は、法律学の学びを通して磨かれるはずです。

本学では1年次から少人数クラス制の演習科目(基礎演習)を用意し、学生と教員が近い距離で専門的な学習を進めます。将来的に法曹を目指す意欲的な学生にとって有益な「法曹養成プログラム」や、語学の素養も磨きたい学生にとって魅力的な「グローバルセミナー」が開設されていることも、本学の特徴です。

法律の解釈には人柄が出る。

——四ツ谷先生の研究について教えてください。

主な研究テーマは担保(たんぽ)法です。担保とは、AさんがB銀行からお金を借りた際、万が一お金を返せない場合にその損失を補うことを保証するものです。わかりやすくいえば、借金のカタですね。Aさんは所有する土地などを売り、B銀行はその売却代金から貸したお金を回収できます。B銀行が持つ権利を担保権といいます。

例えば、会社の業績悪化に苦しむAさんはB銀行からお金を借りました。それでも首が回らず同業のCさんに泣きついてさらにお金を借りました。ところがやっぱりAさんの会社の業績は回復せず、経営が立ちゆかなくなります。このときB銀行は担保権を主張してわずかな資金からお金を回収し、温情でお金を貸したCさんは取りはぐれ、下手をするとそのせいでCさんまで倒産ということになりかねません。

こうしたさまざまな利害を有する人々の間に、どのようなルールを定めることが適切なのかを考えるのが担保法という学問領域です。借りる側・貸す側それぞれの立場を分析しながら、バランスの取れた担保制度とはどのようなものかを考えていく点に、この研究の社会的価値があります。

杓子(しゃくし)定規に条文解釈するだけなら、それこそAIでいいよねという話になります。さまざまな要素を考慮し、バランスを取りながら、法律の趣旨に鑑みて線引きしていくところに法律学の面白さがあります。ある著名な法律家は自戒を込めて「法解釈には人格が出る」といいました。

——驚きました。法律というのは厳格なルールであって、人格が入り込む余地はないと思っていました。

法律にそういったイメージを持つ方も多いと思います。民法ができたのは1898年です。それから130年近くたちます。その時代にネットでの商取引とか、AIのことを誰が想像できたでしょうか。条文の前提となる世界が根底から覆っているんですね。時代が進むにつれて条文が現実とそぐわなくなってきます。そのため、これまで何度も法改正が行われてきました。2017(平成29)年には民法の大きな改正が行われました。

大きな法改正があるときには、法務省に法制審議会が設置され、裁判官や弁護士、法学者などが参加して調査審議を行います。私自身はそこに参加するわけではありませんが、私たちの論文をメンバーが読んで、それが法律の改正に影響を与える可能性もあります。また、法改正に限らず、日々行われている裁判の中で、私たちの論文が弁護士の理論武装に役立つこともあります。私は、大学の教員になる前に弁護士事務所でお手伝いさせていただいたことがありますが、そのときに本当に学説ってありがたいと思ったものです。

法律は何のためにあるの? その問いに対して、私の知る先輩学者は「人々を幸せにするためだよ」と即答されていました。私もその通りだと思います。人々を幸せにする法の世界に、ぜひ触れてみてください。

法学部 法律学科 四ツ谷 有喜 教授
【専門分野】民法

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