地域の特色を映す 地場産地の 協調と競争を探る
地場産業論を研究テーマとする近藤先生。地域で特色ある産品を生み出す中小企業の集積「地場産地」が、どのようにして発展し衰退してきたのか、その地域の個性や特徴がどのようにして生まれてきたのか、歴史や時間経過の影響をキーワードに、戦後から現代にかけて探っています。そこから見えてくるのは、果たして?
協調と競争から地場産業の構造を研究。
——先生が研究している地場産業論について、詳しく教えてください。
地域に特色のある産品を生み出している中小企業の集積は、一般的に地場産地と言われています。そうした産業地域がどのように発展し、また衰退してきたのか。その土地の個性や特徴がどのように生まれてきたのか、歴史や時間経過の影響をキーワードにして探っています。
——地場産地は、北海道でいうとどうなりますか?
例えば、北海道だと乳製品を使ったスイーツや海産物の加工品などが、地域の特色を表す産品ですよね。地場産地とは、同じ産業に属する中小企業群が、比較的狭い地理的範囲に集合した産業集積と呼ばれるものの一種。北海道にはたくさんのお菓子メーカーがあり、海沿いの地域ではいくつもの水産加工会社がしのぎを削っています。産業集積の理論でキーワードとなるのが、「協調と競争」。地場産地を構成する企業群は、お互いライバルとして競争しながらも、一方では産地の発展のために協力し合うという2つの側面を持っています。
——協調と競争。なるほど、同業者同士の切磋琢磨みたいなものですね。
そうですね。このうち協調の側面は、古くから注目も研究もされてきましたが、競争の側面はあまり研究が進んでいません。
私は福岡県出身なのですが、九州と北海道の地場産業は類似点が結構多いんです。例えば、福岡県大川市と北海道旭川市は、どちらも全国的に有名な家具産地です。戦後の高度経済成長期に発展した2つの産地ですが、バブル崩壊後に両産地がたどった経路はかなり異なっています。
大川に比べて、旭川は売れ筋のイスを中心とした産地となり、高いデザイン性で高付加価値化に成功しています。その背景には、戦後すぐに職人を海外に派遣するなど、産地全体で人材や技術を育てた協調的な取り組みがありました。
一方、大川市では生産工程の分業化が盛んで、若い企業の新規参入が容易でした。そのため産地構造が安定して保存され、大きく変化することはありませんでした。そうした産地の変化についても協調と競争、両面の影響があり、特に私は産地ごとの競争の状況に目を付けて比較研究しています。産地の構造の違いが、歴史的発展にどのような影響をもたらしたのか、現在、職業別電話帳の登録データや商工会議所の会員データなどを用いて実証しようとしています。
——そうした研究は、地域の強みを知ることの役に立ちそうです。
地場産地に集積するのは中小企業。日本の企業全体の99.7%は中小企業が占めていますし、雇用でも従業員の約7割が中小企業に勤めています。地場産地をはじめとする産業集積は、地方の経済や雇用を支える主体として注目されてきました。そうした意味でも、地方の特産品である地場産業の振興が、地域経済の活性化や地方創生にもつながります。
経営学においても、中小企業が戦略的に生き延びるには、大企業と異なる行動原理が必要ですので、論理的考察を深める分野としても興味深い。私の研究テーマである企業間競争の効果は、今後の理論的発展が期待される分野だと考えています。
「あれ?おかしいぞ」が成長ポイント。
——経営学は幅広い学問ですね。北海学園大学経営学部の魅力はズバリ何でしょう?
経営学部と一口に言っても、組織論や戦略論、マーケティング、心理学、それから英語まで多角的な視野から企業経営について学べるのが本学経営学科の魅力です。それだけ、多様な分野を専門とする先生方が集まっているということなのですが、全国的に見ても珍しいのではないかと思います。
会社経営に欠かせない組織論にしても組織心理学と合わせて学べたり、外資系企業や世界で活躍できるような生きたビジネス英語を学べたり、授業が多彩です。そのほか、企業とコラボレーションしてプロジェクトベースで学べるゼミがあったり、キャリアデザインプログラムで企業の方と一緒に企画を考えたり、生きた教材で学べるのも魅力です。
——選択肢が多いので、学生の興味に合わせていろいろ学べそうですね。
そうですね。高校までの学びは、学習指導要領に沿って正しいとされる知識を身につけることが最優先されると思います。大学はむしろ、自分自身が疑問に思うことを素直に追いかけることが評価される場なんです。大学の授業は、学生にそのきっかけを与える場に過ぎないと言えるでしょう。ですから講義で先生の話を聞いて「あれ?おかしいぞ」とか「じゃあ、この場合はどうなるんだ?」という疑問が出たらしめたもの!
そこから探究心にスイッチが入るんです。「先生の言ってること、ちょっとおかしいじゃないか」と思ったら、それを先生にぶつけてくれてOKなんです。そういう姿勢やほかの人と違う視点が大事。多くの先生たちが、学生に対して「先生の言うことをそのまま信じなくていいよ」というスタンスでいます。先生に逆らったっていい。それが大学の学びです。
——これから大学生になる皆さんへメッセージをお願いします。
大学の学びは、高校までの勉強のように、内容と範囲が決まっているわけではありません。ボーッとしていると何も身につかずに時間だけが無駄に過ぎてしまう可能性もあります。大学では、疑問が出たら、周りの先生にどんどん質問してみてください。答えは教えてくれないかも知れません。でも、一緒に考えてくれたり、ヒントをくれたりはするはず。
経営学科では、その考える内容がビジネスや仕事に関わるものなので、皆さんの就職や将来のキャリアに少なからずプラスになると思います。
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