広告やSNSを見て商品を買う。 これがマーケティング・コミュニケーション。
経営学を多角的に学べるのは、学園大経営学部の強みの一つ。「戦略論、組織論、マーケティングに心理学など、教員の専門領域が多彩です。興味のある切り口で、さまざまな角度から経営を学べる環境が整っています」と、話す下村直樹先生の専門は「マーケティング・コミュニケーション」。実は意外なところで、私たちは毎日、マーケティング・コミュニケーションに関わっているんです。
商品の裏側にある物語を探る。
–先生の研究テーマを教えてください。
現在は、大きく2つあるのですが、一つは企業や消費者が持っている物語を取り入れたマーケティングについて。もう一つは、広告の倫理について研究しています。
「物語を取り入れたマーケティング」というのは、企業側のことについて説明すると、例えば、ある商品開発の裏側にある苦労の部分をうまく伝えるにはどうしたらいいかということです。裏側にある物語を、広告や売り場展開、イベントなどを多様な場面で伝え、それに共感して買ってもらうにはどうしたらいいか、という研究ですね。消費者側については、購入した物や使っている物をなんとなくSNSで発信することがありますよね。それが拡散されて商品の人気が広まるとか、新しい使い方がされるとか。そういう消費者が持っている物語を企業側がどうマーケティングに取り入れていくか、ということを研究しています。
–そういったマーケティングの例は身近にありますか?
代表的な例としては、受験シーズンに向けて広告されるキットカットです。九州地方の方言で、「きっと勝っとぉ(きっと勝つよ!)」が「キットカット」の響きに似ていたので、受験のお守りとして験担ぎされるようになったそうです。これもまた、物語をマーケティングに取り入れて成功した一つの例ですね。
–研究の二つめ「広告の倫理」について教えてください。
インターネットがない時代には、広告と接する場面は、いわゆるマスメディアが中心でした。それが今では、インターネットがモバイル機器で使えるようになり、アプリの中にも広告が登場します。勝手に表示されるさまざまな広告の中に、「これはちょっと不快だな」と感じたことはないでしょうか? 例えば、見たいコンテンツの上に広告が表示され、閉じようと思ってタップすると逆に広告を開いてしまう、なんてことがあって、時にものすごく不快だったりもします。広告は人に見られなければ意味がないので、仕方のないことですが、それでももう少し掲示の仕方を考えた方がいいのではないかという場合があります。そういうことを、広告主や広告会社、媒体を運営する企業は考えていかなければなりません。そこを研究しています。
広告の知識は、いろんな仕事に役立ちます。
–先生が受け持っている科目「広告論」と「マーケティング・コミュニケーション」では、どんなことを学ぶんですか?
「広告論」に関しては、広告に関する基礎知識ですね。広告とPR(パブリック・リレーションズ)、宣伝の違いについて用語の説明や広告媒体、広告表現についての話から、広告を見て商品が好きになるメカニズムなど、広告の事例を紹介しながら学びます。
「マーケティング・コミュニケーション」は、一見、難しそうな感じがするかも知れませんが、皆さんも毎日のように関わっていることなんです。例えば、SNSでコンビニをフォローしていたら、クーポンが出てきたので使ってみた。これも立派なマーケティング・コミュニケーションです。スーパーで夕方に値引きのシールが貼られた商品を見て、「お得だな」と思ってそれを購入した、とか、お菓子におまけが付いてくるから、全種類集めるまで買う、といったことも全てマーケティング・コミュニケーション。つまり、企業側から何らかの働きかけがあり消費者が行動を起こす部分を捉えるのが、マーケティング・コミュニケーションで。商品を売るために効果的に使うことができます。そういった知識や手法を紹介しています。
–さらに学びを深めるゼミでは、どんなことをしているのですか?
グループ研究で主に広告の効果を検証することをテーマにして活動することが多いです。あるグループは、道の駅の産直コーナーで、生産者が商品に自分の顔写真を載せていることに着目し、写真が笑顔か真顔か、背景があるかないかで、消費者が広告で商品を選ぶポイントが異なるのではないかを検証しています。またあるグループは、キャラクターとコラボした商品を発売する場合、現在人気のキャラクターより、ターゲット層にとって懐かしいと思えるキャラクターのほうが売れるのではないか、という仮説を立てて検証しています。
どれも、マーケティングというより、マーケティング・コミュニケーションを軸として、消費者にどう訴えるか、どう選ばれるかといったことを研究しています。
–学びを深めるためのアドバイスをお願いします。
マーケティング・コミュニケーションは、将来、広告業界に進むことを希望する人はもちろんですが、どんな企業に属しても生かすことができる学問です。ぜひ消費者行動や社会心理学を扱う科目と一緒に履修してください。また、これは学生全般にいえることですが、大学では高校よりも多くの人と関わり、多くの情報に触れることができます。周りと円滑なコミュニケーションを取るために、そして情報を理解するためにも日本語の語彙力をしっかり身につけておくことをお薦めします。
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