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10 2020

より良いマネジメント・システムを 現場に飛び込んでつくっています。

経営学部経営情報学科 関谷 浩行 准教授

関谷先生が研究テーマとしている戦略的マネジメント・システム
「バランスト・スコアカード(Balanced Scorecard:BSC)」は、組織の経営戦略に漢方薬のようにじわじわと効果を
表していくものだそうです。
病院などの現場に飛び込み、現場の方々に寄り添いながら、
より良いマネジメント・システムを一緒に構築することが
研究の喜びとなっています。

 【研究】「財務」はあくまでも結果。目に見えない「非財務」こそ重要

BSCとは、従来の管理会計が財務指標に偏っているという批判に応えて誕生した戦略的マネジメント・システムです。組織の利益率などを示す「財務指標」は、顧客満足や組織文化などの「非財務指標」があって初めて高めることができます。BSCは営利組織だけではなく、例えば病院や地方自治体の上下水道を運営する非営利組織などにも数多く適用されています。私の主な研究対象である病院を例にすると、「財務を高めろ(お金を稼げ)」といくらトップが言っても、医療従事者はやる気を起こしません。財務業績はあくまでも結果で、それは患者満足や適切な治療、医療従事者の能力といった非財務指標の向上があってのこと。良い医療を行った結果が財務につながるなら、医療従事者にはしっくりきます。そこで、戦略マップ(※図表)を活用して目には見えない非財務指標などを見える化することで、全員が同じベクトルでより良い組織を目指していきます。

 【研究】時間をかけて根付かせて。BSCは漢方薬のように効いていく

研究は、アクション・リサーチ(Action Research)によって進めます。最終的にどういう組織体になりたいのかという理念やミッションから着手し、そこに行くための戦略を組み立てます。現場で勉強会を通じて少しずつ取り組みを進めますが、こんな事例がありました。戦略マップで設定される「顧客の視点」には内部顧客と外部顧客があり、病院の場合の外部顧客は患者さんと家族、内部顧客はドクターからすると看護師、検査技師といった方たちです。ドクターは看護師や検査技師の方たちを部下のように捉えがちですが、チーム医療を促進するためには内部顧客という視点が重要です。時間はかかりましたが、それをドクターに納得してもらうことができ、一つの大きな成果になりました。そうしたことの積み重ねが、 BSCを根付かせるには大切です。それを見届けるのが研究の喜びですが、少なくとも5年はかかりますね。注射を打ってすぐ元気になるというのではなく、BSCは漢方薬のように効いていくイメージです。

 【授業】あらゆる組織の価値の創造に貢献するのが「管理会計」の役割

「管理会計」の講義のねらいは、管理会計に関わる基礎的な知識を習得することです。管理会計は経営者を支援するための会計で、さまざまな情報が必要とされ、最も重要なものの一つが会計情報です。経営管理に有用な会計情報を経営者に提供し、企業価値の創造に貢献するのが役割ですから、この講義は会計だけでなく、幅広く経営を学びたい学生にも適しています。会計という言葉が付くと、簿記や計算ばかりのイメージかもしれませんが、繰り返しますが財務はあくまでも結果です。その組織体をどうしていくのかというPDCAをうまく回す仕組みづくりを考えるのが管理会計ですから、どんな組織体でも適用できる内容だと思います。理論と実務のギャップを埋められるように、研究や経験に基づいた事例もどんどん紹介します。非財務指標をいかに適切に測定して管理するかが、これからの時代に重要であることも伝えています。

ゼミで鍛えるのは文章を書く力。一生役立つ大切なことです

経営学部としての知識はもちろんですが、個人的には、大学で身につけるべきは文章を書く力だと思っています。論文の引用や資料収集の方法などを含め、文章を書くためのインプットとはどうあるべきか、どうしたらできるかというのを特にゼミでは強調しています。経営学部は「やってみなはれ」系のところがあるのが特徴で、学生がこれをやりたいと言ったら、それに応えて各教員がフットワーク軽く動きます。企業とのコラボレーションなどに取り組むゼミも多い。でも私のゼミは、全国の現場を訪ねる自分の研究とは真逆なインドア派です(笑)。ただ、文章を書くことは、自分の考えの整理にすごくいいですし、そこから新しいアイデアも生まれてくる。社会に出てからは訓練できないと思うので、大学で文章をしっかり書ける人に育ってほしいですね。

経営学部経営情報学科 関谷 浩行 准教授
[専門分野]管理会計 [主な担当科目]管理会計

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