その商品はどう選んだ? そこにも学問がある。
コンビニに入って商品棚の前に立ち、どれを買おうかと選ぶ。私たちが毎日のように行っている買い物というごく日常的なことが、消費者行動、行動意思決定論という村上先生の専門分野と実は深く関わっています。買い物などの身の回りの出来事を多く取り上げ、「学問を身近に感じ、興味を持ってもらえるように」と意識しながら、講義やゼミを進めています。
視線を調べて買い物との関係を探る。
–専門分野の消費者行動、行動意思決定論とは、どんな内容なのでしょうか?
消費者行動と聞くと難しく感じるかもしれませんが、普段のお買い物など、日常生活との関わりが深いテーマです。例えば、100円の商品が10円値引きされているときと、1万円の商品が10円引きされているときとでは、同じ10円引きであるにもかかわらず安くなったという感覚が違うと思います。このような普段のお買い物に関する不思議な現象がなぜ起こるのか、人は価格に対してどういうふうに感じるか、などについて調べたりもしています。僕はこれまで、お買い物の時にどう行動しているのかなど、人の意思決定現象について、眼球運動測定装置や数理モデルを使って検討してきました。
–研究はどのようにして行うのですか?
消費者が商品を選んでいる際の視線について、眼鏡のような眼球運動測定装置を装着してもらって調べ、どういうふうに見ていたら、どういうことを考えているのか、注視の順序と意思決定との関係についての実験などを行っています。実際のスーパーマーケットに協力していただき、お客さんを対象に調査したこともあります。乳製品の棚を5つの領域に分けて、それぞれの領域をどういうふうに見ているのかなどを調べました。この実験では、最終的に選んだ商品は、ほかのものと比較しながらも、最初からよく見ているといったことが分かりました。こうした実験で得られたデータを用いて、人はどのように商品を選ぶのかなどについて、数理モデルを使って予測したり分析したりしていきます。
–先生の研究は、いろいろな物事を選択する際の助けにもつながりそうですね。
助けになればいいんですけど、まだまだなんとも(笑)。迷ったときに、より良い道を効率的に選択するためにこういう選び方をすれば割とうまくいくとされる研究の結果によると、重要な属性を考えて、何が一番大事かというところから選択する。そうすると、よく考えて選んだときと同じぐらい良い決定をしやすいといわれています。「選ぶ」ということには本当にいろいろな要因があって、感覚的なところもあるのでしょうけれど、それを一面だけでも説明できたらと思って僕は研究を進めています。どの商品を選ぶかを予想したり、意思決定中の心理状態の予測をしたりできるかもしれないと考えています。
できれば楽しく、挑戦を。
–先生のゼミナールは2022年度からスタートしたのですね。
ええ。まずは機器を使ったりしながら、心理学の実験の基礎的なところを学んでもらっています。実験のプログラムを作る場合もあるので、プログラミング言語の習得や実験で得られたデータを分析する能力も身につけてもらいます。さらにはその結果をまとめて文章にし、できれば卒論まで持っていってもらいたいという思いがあります。VRを使った消費者行動の研究にも挑戦する予定です。仮想の商品棚をヘッドマウントディスプレイで見られれば、より実験しやすくなるのではと期待しています。集まってきたゼミ生は、心理学や消費者行動、プログラミングなどに興味があるようです。研究活動はグループワークで行うと紹介しているので、コロナ禍でほかの学生と関わることが少なかったため、グループで活動する機会を持ちたいと志望してくれた学生もいます。
–グループワークを行う狙いは?
そもそも作業が割とたくさんあるので、一人だとなかなか進みません。プログラミング一つとっても、これまで触れたことがなければストレスになるでしょうから、周りの仲間と一緒にわちゃわちゃやることで、少しでもストレスを減らしながらうまく進めていってもらえたらというところです。さらに言えば、社会人になったら周りの人と協調して何かをやるということが多くなりますから、グループワークの経験の中でそういうものも学んでもらって、ほかの人とどうコミュニケーションを取っていったらいいのかを身につけてほしいですね。いろいろなことができるゼミですから、研究活動を通して、データを分析したり文章をまとめたり、できればプレゼンテーション能力も鍛えられればいいなと思っています。
–ゼミのモットーは「新しいことに挑戦する」だとか。
自分自身も何か少しでも新しいことができたらいいなと思って、ここまでやってきました。ですから、それをそのままモットーにしている感じです。学生と一緒に新しいことに、できれば楽しく挑戦していきたいと思っています。そのためにもゼミ生は、好奇心が強い方がいいなと。専門分野に限らず、初めてやらなければならないことが多いと思うので、ぜひ好奇心を持って挑戦してもらいたいです。
–本学の経営学部が持つ特色を、着任されてから強く感じられたそうですね。
心理学系の教員がとても多いことに、まずびっくりしました。経営学部でありながら、心理学系の行動科学実験室を持っていることにも驚きました。こうした点はこの学部の強みでしょうし、心理学系に興味を持っているなら学ぶ上でとても恵まれた環境だと思いますね。結局のところ、経営に欠かせないマーケティングでも相手は消費者というか人になるわけなので、心理学の面から人について理解を深めていくというのは重要ではないかと思っています。
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