本が好き、旅が好き。 「好き」に応える 学びがあります。
日本文化学科には、多様な専門を追求する先生たちがいます。谷端郷先生の専門は「人文地理学」です。古地図から災害の歴史をデータ化し、現在の防災に役立てる仕組みを作ることに貢献。また地域と連携したプロジェクトに参加し、住民の話に耳を傾けながら「防災マップ」の作成にも取り組んでいます。
歴史を検証し、現代に生かす。
–そもそも人文地理学とは?
人文学と聞くと、文学とか歴史学、宗教学や哲学なんかの文献を読んで、解釈する学問を思い浮かべる人が多いと思います。でも、実はそればかりじゃない。現地調査を行ったり、資料を発掘したりフィールドワーク系の分野もあるんです。人文地理学は、フィールドワーク系の人文学。人と地球や環境との関わりが研究対象になります。
–先生の研究について教えてください。
僕の研究テーマは、主に4つあります。1つめは地理学の立場から過去の災害を再検討する歴史災害研究です。昭和の戦前期、大阪、京都、神戸で起きた大規模都市水害を研究対象として、戦前から戦後にかけての都市水害の歴史を見直しています。2つめは岩手県の津波常襲地域で、津波関連の伝承を持つ地名が、明治から現在に至るまでの間に、なぜ消えてしまったのか、またはなぜ残存しているのかを探る調査プロジェクトに参加しています。それから、3つめは2011年の東日本大震災後、地域のお祭りがどのように執り行われているのか、あるいは震災前後でどのように変容したのかなどを記録化し、地域における祭礼の意味を考える調査活動を行っています。最後に4つめは大学の地域連携事業の一環として、ニセコ町などで地域の方々と防災マップ作りに取り組み、自主防災組織の活性化を支援しています。
–過去の災害に関する研究から、現代に生かせることは何でしょう。
ひとつめのテーマとしてあげた災害の歴史の見直しですが、当時の被害状況が示された古い地図を、地理情報システム(GIS)で分析します。古地図と現代の技術を融合することで、災害の再検討を行い、被害が大きかったところの要因を分析し、今後の防災に役立てることができるのではないかと。特に、都市水害の歴史は第二次世界大戦後から語り始められることが多いのですが、戦前にもとりわけ大規模なものが頻発していました。防災対策の進展によって克服された、過去の現象のように思われていますが、決してそうではないんです。低頻度大規模水害と言って、めったには起きないが、ひとたび堤防が破壊されるような大洪水が発生したら、やっぱり戦前と同じような大水害になってしまう。古い資料から学ぶべき点はまだあるんじゃないかと。過去の災害を見直しつつ、そこから学んだことをどのように社会に発信していくべきか、そこまでを射程に入れた研究を目指しています。
2つめから4つめまでの研究は、地域で起きた災害の記憶、そこから得られた教訓をいかにして後生に伝えていくか、「継承」と深く関わっています。その知見を、例えば防災教育や地理教育の中で生かすことも可能です。
多様な教員、多様な学び。
–先生はフィールドワークを大切にしていますね。
大学院生だった2011年に東日本大震災があり、災害の研究をしていたということもあって、立命館大学の歴史都市防災研究所が行っている調査団に加わりました。この研究所は、災害から文化財を守ることをコンセプトに運営されているのですが、東日本大震災後には、地域文化の復興に果たす役割を明らかにするために、地域のお祭りがどうなっているのか、実際にお祭りに参加したり、地域の人から昔の話を聞き出したりして、それを地図(我々は「記憶地図」と呼んでいます)にまとめることにも取り組んでいます。
また、ニセコ町でも地域の人しか知らない災害の歴史などを「防災マップ」としてまとめる作業を、大学の地域連携事業の一環で行っています。人文地理学に限らず、文化人類学や民俗学など、人文学部にはフィールドワークを交えた学びがたくさんあるんですよ。
–学園大の人文学部は学びの幅が広いですね。
人文学部は、本を読むのが好きな人には文献で深める学び、旅が好きな人には現地に出かけるフィールドワーク、そうした興味・関心・特性に応じた学習や研究ができる環境を整えています。特に日本文化学科には、専門の異なる教員がたくさん在籍しています。先ほど紹介したような学問に加え、映画論、日本思想史、日本語学など、人文学を構成しているさまざまな学問を学ぶことができます。さらに教員間の連携も密にやっていますので、異なる専門分野を組み合わせた研究も可能です。例えば、文学作品を地理学的な観点から読み解くという研究をしている学生もいます。坂の多い小樽が舞台の小説では、作者にとって「緩やか」「急」な坂はどのくらいの傾斜度なのかを検証しています。
興味に合わせて学びを広げられるのが本学科の魅力ではないでしょうか。
–受験生に向けてメッセージをお願いします。
大学選びは知名度や学力レベルだけでなく、どんな教員がいてどんな研究や授業を展開しているのか、そしてどんな授業が面白そうで、興味があるのかを一度じっくり調べてみてください。皆さんの学びたい内容と、大学や学部が提供している学びの内容が、より具体的なレベルで一致していると、受験勉強のモチベーションも高まるでしょうし、大学生活もより一層充実したものになると思います。
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