02
03 2025

ディスプレーに欠かせない 液晶の分子が織りなす 秩序構造に魅せられて。

工学部 電子情報工学科 佐々木 裕司 准教授

佐々木先生の専門は物理学。ソフトマターと呼ばれる物質群が研究対象です。ソフトマターとはゴムやクリームといったやわらかな物質の総称で、その中でも佐々木先生は液晶材料に注目しています。研究を通して、液晶分子の集合体が作り出す複雑な秩序形成のメカニズムを理解・制御し、光学などの技術へ応用することを目指しています。

分子の自発的な振る舞いを制御する。

——先生自身が取り組んでいる研究について教えてください。

私はもともと物理学を専攻していて、現在は主にソフトマターと呼ばれる物質群を研究対象にしています。物理というと皆さんは物体の落下運動やバネの振動といったものを想像すると思います。ソフトマターはやわらかな物質の総称で、高分子、コロイド、界面活性剤などからなっています。これらの物質は、基本的には分子から構成されていて、その構造は少し複雑です。それでも、固体と同じように物理法則に従っていています。そういうやわらかな物質は独特な振る舞いを示すことが多く、私はこの分野の面白さを感じています。

中でも私は、ディスプレイなどの電子デバイスに欠かせない液晶に注目しています。液晶は、液体と固体(結晶)の両方の性質をもった「物質の状態」を表す言葉です。感覚的に表現すると、しっかりと固まっているわけではなく、水のようにサラサラ流れるのでもない、ドロドロした状態です。私たちの体の中や昆虫のハネにも、液晶の構造を見出すことができます。

私の研究では、液晶分子が集合体として自発的にどういう秩序を取るのか、その複雑な秩序形成のメカニズムの解明を行っています。数ナノメートルの棒状の分子一つひとつが、バラバラの状態から自発的にどう秩序だった形になるのか。実験では、ガラス基板を組み合わせた試料セルを用意し、電気信号を与えてどのようなテクスチャ(模様)が得られるのかを顕微鏡で調べます。

——この研究の先に、社会へのどんな応用が考えられるのでしょうか。

液晶ディスプレイは、その仕組みについてはここでは詳しくふれませんが、液晶分子の振る舞いを電気で制御し、その変化を光学的に活用しています。私の研究も、液晶分子の集合体が作り出すユニークな秩序構造を、光学などの技術へ応用することを目指しています。例えば特殊な光波を作り出すなど、新たな光の制御方法を確立することができれば、エレクトロニクス以外に微細加工や通信などの分野にも貢献できる可能性があります。

社会実装も重要ではありますが、一方でやはり私を引きつけるのは液晶の美しさです。顕微鏡で見たときのテクスチャはとても神秘的で、流体が秩序を持った構造を自発的に作り出す様子は学問的にも非常に興味深いものがあります。

食わず嫌いせず、何に対しても前向きに!

——電子情報工学科全体の学びの特徴を教えてください。

スマートフォンをはじめ私たちの身の回りにある電子機器は、「電子工学」と「情報工学」の技術を組み合わせて作られています。電子情報工学科では、電子デバイスなどのハードウェアと、それを動かすソフトウェアについて幅広く学び、実践的な授業を通してそれぞれのスキルを身につけます。

どちらも社会に出てからさまざまな分野で役立つ重要なスキルですから、将来はソフトウェアの仕事に就こうと考えている人にとっても、ハードウェア的な知識があることは大きな強みになります。今は半導体分野が注目を集めていますが、電子工学の要素が強い半導体であっても、コンピュータしかり、スマートフォンしかり、その技術の出口を知っておくことは重要で、仕事に向かうモチベーションにもつながるはずです。

——電子情報工学科への受験を考えている皆さんへメッセージをお願いします。

繰り返しになりますが、電子情報工学科ではハードウェアとソフトウェアの両方を学びます。せっかく幅広く学ぶのだから、やりたいことを見つけるためのチャンスがたくさんあると思ってほしいです。最初は難しそうに感じる授業であっても「とりあえずやってみよう」ぐらいのポジティブな姿勢で臨んでほしいと思います。食わず嫌いはもったいない。将来やりたいことが決まっている人も、そうではない人も、勉強はもちろんですが、それに限らず、あらゆることに前向きに取り組んでほしいと思います。

工学部 電子情報工学科 佐々木 裕司 准教授
【専門分野】ソフトマターの物理学

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