これまでも、これからも 暮らしをつくるのは土木だ!!
山を切り開き、川を整備し、この街が生まれた
―社会環境工学科が扱う「土木」分野には、どんな面白さがあると感じますか?
これだけ人の生活に密着している学問も、珍しいと思うんです。例えば、北海道は開拓使が入る前は、山と川と野原だったわけです。そこを人が住めるようにしたのは土木の力で、それがなければ今の札幌市もできていない。そういう意味で、影響力がものすごく大きい分野だと思うんです。
―本当に広い分野で、大きくは構造、水、地盤、交通の四つに分けられるんですよね。
そうです。それぞれ身近な例を挙げていくと、水なら例えば石狩川。昔は蛇行して洪水が起こりやすかったため、真っすぐにして周りに人が住みやすくし、上下水道に利用しやすくしました。地盤では、胆振東部地震や熊本地震などで大規模な地滑りがあったことが記憶に新しいと思いますが、斜面が崩れないようにする土留めの設計なんかも土木の分野です。交通の分野だと、北海道新幹線を札幌まで延ばして終わりではなく、そこからの人の流れを含めてどう整備すれば暮らしやすくなるのかも考えなければなりません。そして、僕の専門である構造です。阪神・淡路大震災の被害を教訓に、橋に求められる耐震性能は大きく変わりました。これ以降に建設された橋は、熊本地震や胆振東部地震などでも倒壊するようなレベルでの損害はなかったはずです。このように、自然と人がうまく付き合っていくためになくてはならない学問だと認識しています。
―社会的な意義や役割も大きいわけですね。
土木には、社会の進む方向を規定できるポテンシャルがあると思っています。今、車の自動運転の技術がどんどん進歩していますね。そう遠くない将来には、もうハンドルを握らなくてもよくなるかもしれません。こうなると、車が通行する橋の方も、自動運転に対応したものでないと困ります。AIの誤作動で、車が歩道に突っ込むような事故が多発するかもしれませんよね。これを解決するには、かなり大ざっぱな言い方になりますが、歩道に車が突っ込んできても大丈夫なように、歩行者と車を完全に分離するような橋をつくればよいのです。
学んで、研究して、キミの力で北海道をより良く
―凍害で劣化した橋などの耐力評価が先生の研究テーマ。実験結果が出るのには時間がかかるようですね。
そうです。コンクリートに繰り返し温度変化を与えて劣化の状態のデータを取ったりするので、時間はかかります。たまに学生に、これを勉強してなんの役に立つんですかと質問されるのですが、それはちょっと頭にくる(笑)。例えば、グーグルの仕組みには数学がものすごく使われていますが、はるか昔に数学を研究していた人がインターネットについて想像していたかといえば、そんなことは絶対にない。すぐに役に立たないとしても、研究していれば、後世の人が勝手に役立ててくれるんですよ。そういう、もしかするとすごい影響力を持つかもしれないことを勉強するのが大学。学ぶ環境が高校とはまったく違うので、勉強するきっかけとなるような刺激を学生に与えられればと思って、日々、授業をしています。
―学んだことが、仕事の基礎として生きる分野という印象ですが。
もちろんそうだと思います。少子化が進み、かつ理系離れが叫ばれているので、工学部できちんと勉強した学生は、何の誇張もなく、企業にとっては“金の卵”です。
―強いていえば、どういうタイプが土木の仕事に向いていると思いますか?
月並みですけれど、周りの人と一緒に仕事ができること。つくるものが大きいですから、一人では何もできません。この学科では、チームを組んで藻岩山で測量実習を行うなど、何人かで課題を解決しなければならない状況も意識的につくっているので、自然とコミュニケーションが取れるようになっていきます。
―誰かと一緒に何かをつくる、考えるという作業も多いのですね。
ええ。ものづくりの楽しさみたいなことを伝える教育をしている学科だと思います。OB・OGの多くが道内で活躍していることも特徴で、いろいろなつながりをつくりやすい。「北海道で生きていきたいんだったら学園大!」と、もっと広めていきたいですね。
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