08
31 2020

世界で活躍するためのヒントは、 きっとここにある!

人文学部英米文化学科 准教授 小柳 敦史 主な担当科目/ヨーロッパ文化概論ヨーロッパ文化特論Ⅰ

  

反省がなければ近代ヨーロッパ文化は生まれなかった!?

―ひと口にヨーロッパ文化と言っても範囲は広いですよね。
 授業ではドイツ、イギリス、フランスを中心とした、近代のヨーロッパ文化を扱います。文化とはいえ音楽や芸術ではなく、生活様式に関わる文化がテーマです。私たちの生活にすっかり溶け込んでいる「ヨーロッパ的なもの」は、言い換えれば「近代的なもの」。それらはずっと昔からヨーロッパにあったのではなく、近代以降、反省とともに日本に伝わり、今の形になったということを話しています。

―“反省”とはどういうことでしょう?
 例えば、私たちが日常的に着ている「洋服」。その歴史を見ると、ヨーロッパでは中世の終わりから近代の始まりにかけて、コルセットで締め上げて体型を美しく見せる服が主流でした。産業革命以降はより安価なものが出回るようになり、セレブだけでなく一般庶民にも普及。この流れは1900年代に入ってもしばらく続きました。しかし、美しく見えても苦しくて健康に悪いということに気がつく。その反省から服装改革が起き、ふんわりと楽に着られる現在のワンピースのような服が登場しました。これは当時「改革着」と呼ばれていたんですよ。

―身近な例から学ぶわけですか?
 その通りです。服だけでなく、食もそう。フランス革命以降、巷にレストランが誕生し、外食産業が発達しました。フランス美食文化の幕開けです。産業革命以降、「食」は工場での大量生産が可能になり、食品添加物がたくさん使われるようになった。そこで「このままの食生活でいいのだろうか?」という反省から、自然食や家庭の味の大切さが提唱されるようになりました。

―衣・食とくれば、住はどうでしょう?
 住まいについてもやはり近代化の中で住環境の悪化が進みました。ワンルームマンションができて、都市部では大気汚染が進むと、その反省から住まいや街を変えようという動きが起きます。自然や公園と暮らす、「田園都市」が生まれたのです。近代ヨーロッパの生活文化は、こうした反省の上に構築され日本にも伝えられました。

人間って何だろう?答えは文化や思想の歴史に

―特論の授業ではどんな文化を扱うのですか?
 特論では「歴史」に関する20世紀ヨーロッパの思想、哲学を題材にします。ヨーロッパには意識的に反省をしてきた文化がありますから、歴史についても過去の痛みを振り返りながら、意味を考えるという思想があるんです。授業では哲学者の考察を読み解くだけでなく、歴史的出来事を描いた映画を見ることも。ナチスドイツ時代のホロコーストやアウシュビッツなど、同じ出来事について描いたいくつかの映画を見比べ、歴史を描き出すことの可能性の比較検討もやっています。

―なぜヨーロッパの哲学や思想を学ぶのでしょうか。
 ヨーロッパの哲学や思想を学ぶことには、二つの大きな意味があります。一つは相手を知るために必要だということ。将来、欧米圏で関わる相手の文化や社会の背景を知ることは、相互理解に欠かせません。もう一つは自分たちを知ること。私たちも近代ヨーロッパが生み出した社会の仕組み、民主主義、自由、平等などを理想としています。ヨーロッパについて知ると、今まで知らなかった自分たちのことも見えてくるのです。

―相手を知り、自分を知れば、世界に出るのは恐いことじゃないと思えてきます。
 近代ヨーロッパが生み出した社会や理念は、地球上のあらゆる場所に広がりました。基本的には良いことですが、そのせいでもともとそこにあった文化を破壊したり軋轢を引き起こしたりもしました。そこについても反省してきたヨーロッパ文化の思想には、さまざまな問題解決のヒントや困難に向き合う手がかりがあります。本学の学生には、そういった力を身につけ、欧米圏だけでなくアジアやアフリカなど世界のあらゆる場所で活躍してほしいですね。

―世界で活躍できる日が来るかもしれないなんて、夢が広がります。
 「人間って何だろう?」「人間が作る社会って何だろう?」。多様な学びができる本学の人文学部はその好奇心に十分応えられる場所です。卒業後、社会で活躍するにしろ、山奥に一人で生活するにしろ、よく生きていく上で必ず役に立つ力が身につくはずです。

人文学部英米文化学科 准教授 小柳 敦史 主な担当科目/ヨーロッパ文化概論ヨーロッパ文化特論Ⅰ
 

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