経済の「歴史」を知ることで 今を理解し、これからを見渡す。
例えばアルバイトを始める時には履歴書を書いたり、自己紹介を
する時には出身校や部活などこれまでしてきたことを話したり。
過去の自分を語ることによって、今の自分を知ってもらいます。
「それは、経済でも一緒なんです」と板垣先生。
経済の歴史を学ぶことで、現状を理解し、さらには将来への指針
を得ることにもつながるといいます。
【研究】日本の経済・産業・企業の歴史を分析し、本質を明らかに
日本の経済・産業・企業の歴史を分析し、それらの本質的な部分を明らかにすること。それを目的に、「日本経済史」を研究しています。経済・産業・企業の強みや弱みなどを含めた歴史を学ぶことで、現状を理解し、将来の指針を得ることもできるのです。テーマの一つは、 1960〜1970年代の自動車の環境・安全規制について。この年代の日本は環境問題がクローズアップされ、自動車の排気ガスが社会問題化していました。排気ガスをどう規制していくかという中で、環境を守るための基準を単純に決めるのではなく、政府は自動車業界が達成できる範囲の基準から規制を始めました。アメリカの場合はかなり厳しい設定の法律で規制するかたちを取りましたが、結局、達成できませんでした。ところが日本は、段階的に基準を引き上げていく政策を取り、世界的にも厳しい規制を達成。そこに至る政府と企業のやりとりや相互作用などを研究しています。規制の達成には自動車メーカーの努力や技術があり、そこで得た技術は後の自動車産業の発展にもつながりました。また、自動車の普及による事故が社会問題化した時期でもあるため、安全面での規制がどう進められたのかについても見ています。
【研究】歴史は繰り返さない。ただ、コアな部分は生き続ける
歴史には何の意味があるのか、みたいな話がよく出ますが、昔の社会や世界を知ることができる楽しさというのはもちろんあります(笑)。それはそれとして、歴史を知ることによって、対象の中核を形成するコアな部分を明らかにできるという意味があると思います。人によって考えは違うでしょうけれど、私は基本的には歴史というのは繰り返さないものだと思っています。条件がまったく違いますから。ただ、コアな部分は生き続けると思うので、それを確認することによって、例えばこの条件に持ってきたらどういうふうに変わるかとか、分析する上での一つの手法にはなります。本質を明らかにし、理解するための歴史学というのはあるのかなと思います。これは、授業にも通じることです。
【授業】出来事を暗記するのではなく、流れや因果関係をつかもう
「日本経済論」の授業は、戦後から現在までの日本経済と産業の歴史を見ていきます。各回で時期を区分し、その特徴をスライドなどの資料を活用して説明します。歴史を学ぶことで今の日本、日本経済とはどういうものなのかを理解し、それによって未来の予測はできないと思いますけれど、ある環境に立った時にどうなるかという推測とか判断基準はできるかなと思っています。さらに言えば、「こうしたことがまた起きている」といった表面的に過去と比較した言葉に惑わされず、その歴史はどうして起きたのかを広い目できちんと見ることで、本当に似ているのか、違ったところはないのかを見極め、判断する材料になるはずです。そのためにも、授業では出来事を暗記するのではなく、流れや因果関係を把握してほしいと思っています。
「資源をどう配分すれば幸せか」。家庭でも生きる経済学的考え方
経済学部で一番大事なのは、「経済学的考え方」を学ぶことだと思います。経済とは結局、限られた資源をどう配分すると社会全体が幸せかを考えるということ。何かを選択する時に、どうすれば最適化するかという考え方を常に頭の隅に入れておく。理想としては、意識せずにそういう考え方ができるようになってほしいと思います。もう一つ言うなら、みんなが欲しいものを全て手に入れることができるわけではありませんので、ポイントになるのはいかに全員が満足できるか、そういう方向に進められるか。Win-Winの関係を持ちながら、最適な配分にできるような社会やシステムをつくることが大事だと思います。それは、仕事では当然ですし、家庭や友人関係でも生きる考え方です。経済学の理論をただ覚えているだけでは役立つ場面が限られますが、そうした考え方はそのまま社会や生活の中で役立つと思いますね。
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