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22 2020

言語と社会の間にあるものを見る。 それが社会言語学の考え方です。

人文学部英米文化学科 BOUCHARD Jeremie(ブシャー ジェレミ) 准教授

「あなたはなぜ日本語を話すのですか?」。そう聞かれたら、きっと多くの人が、「日本人だから」と答えるかもしれません。でも、「それは、ずっと昔の考え。人間はもっと複雑です」とブシャー先生。社会言語学とは、言葉と社会の関わりについて考える学問。異文化コミュニケーションの考え方にも役に立つといいます。

【研究】社会のさまざまな要因と言語の関係を探る

私が研究している社会言語学は、言語と社会の関わりを研究する学問です。例えば、その人が話す言葉は、その人が受けてきた言語教育や通った学校、職業、社会的立場やアイデンティティーなど、さまざまな社会的要因から影響を受けています。こうした言語と社会的要因の間にあるものを研究するのが社会言語学。この50年、60年くらいで発展してきた、まだ若い学問ですが、そこに含まれるテーマは、古代ギリシャの時代からあったもの。哲学や社会学、経済学、法学などさまざまな分野と関連しています。
2016年に博士課程を修了して以来、国内外の学会で研究結果を発表してきました。これまでに2冊の本を出していて、たくさんの共著もあります。現在、新たな本を執筆中ですが、テーマは「日本の小学校における英語教育の言語ポリシー」。人と組織にどういう関係があるか、教師がどう理解しているのかを探り、小学校での英語教育をより良いものにするために、できることを検討したいと思っています。教育もまた社会言語学の一部ということです。

【研究】「日本語は日本人の心」という考え方はもう古い

「文化、構造、エージェンシーの関係から発生する言語の社会的リアリズム研究」についての説明

中学、高校、大学と学んでも、英語を話せる日本人はそんなに多くありません。よく日本の英語教育の問題点が、日本人の特殊性を強調する「日本人論」というイデオロギーから説明されることがあります。しかし、私はそこに疑問がありました。日本人とはどういうものか、そのようなイデオロギーと実際の英語教育の状況にどのような関係があるのかを、理論的に説明をしなければならないと思い、1年間、札幌市内4つの中学校で、英語の授業を録音したりインタビューを行ったりして、それらを分析しました。その結果、日本人論的な側面はいくつも見受けられましたが画一的ではなく、むしろ日本人論に反することが多く見つかりました。より強く出ていたのは、ネイティブスピーカリズム。ネイティブスピーカーが一番の先生であり、「言語は遺伝」と考えるイデオロギーです。しかしこれはもう古い考え方。人間はもっと複雑で、環境によって大きく変わるものです。

【授業】日本社会の中に課題を見つけ、卒業研究につなげる

「英米文化専門演習」は、社会言語学よりも広い社会学を基本としています。使用するのはアメリカの学生のために書かれた社会学の教科書。英語で読んでディスカッションします。その年によって違いますが、授業で使う言語はほぼ英語のみ。日本社会にあるさまざまな問題に関わりながら、自分の研究課題を見つけ、理論研究、データ分析、結論を出すというプロセスで卒業研究に繋げます。
前期は社会学の基礎を学んで実際の問題について理解を深め、後期はジェンダーギャップや教育を題材にして研究プロセスを習得します。学生が選ぶ研究テーマには、異文化コミュニケーションやSNSと社会のつながり、ジェンダーなどさまざま。面接や研究はすべて英語で行っています。社会的観点や研究する視点を身につけると同時に、英語を自分のツールとして使いこなすことにも主眼を置いています。

英語を自分のものにして、批判的な考え方を磨こう

私が学生に期待するのは、批判的な考え方を身につけることです。社会には目に見えないものがたくさんあります。例えば、政治や文化はそれ自体、目に見えません。しかし、政治には決断があり、文化にはファッションがある。そのような目に見える形で表れたものをそのまま受け止めるのではなく、なぜそうなったのか、見えないものが生活にどんな具体的影響を及ぼすのか、そういったことに考えをめぐらせるのが批判的な考え方です。異文化コミュニケーションに関わるなら、批判的な考え方は必須。文化の違いを認めることは、表面的なことに過ぎません。大切なのは文化と文化の間のつなぎ。違いではなく同じところ、同じ経験を理解し、同じ価値があるのかを考えることです。日本の学生は、英語に対して苦手意識を持っています。でも、みなさんの英語力は十分足りています。壁を作っているのは自分自身。私はカナダのケベック州出身で母語はフランス語。英語は勉強して習得しました。英語を上達させるための道はさまざまです。本でもいいし、YouTubeだっていい。勉強しているうちに、英語は「借りている言語」から「自分の言語」に変わっていくでしょう。上手に話すことではなく、力強く自分の言葉として話せることを目指してください。

人文学部英米文化学科 BOUCHARD Jeremie(ブシャー ジェレミ) 准教授
[専門分野]社会言語学 [主な担当科目]英米文化専門演習