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24 2021

<TOPIC 工学部 建築学科> 北海道の凍害対策を見据えて、 まずはコンクリートを練るところから。

工学部建築学科4年 田中 幹也 北海道札幌啓成高校出身

多くの建築物に使われているコンクリートは、水・砂・砂利・セメントなどを練り混ぜて作られています。建築材料としてさまざまなメリットを持つコンクリートですが、気象条件の厳しい北海道では、凍害によるひび割れなどの劣化が問題に。そこで田中さんは足立研究室で、コンクリートの破壊状況をより適切に把握するための方法について卒業研究として取り組みました。試験体となるコンクリートを作るところからスタートし、3種類の方法で試験を行ってデータを取り、検討し、実験結果をまとめて卒業研究発表会へ。すべての過程が、座学とは異なる興味深い経験になったといいます。

予備知識をつけなければ始まらない。

—この研究室を選んだのはどんな理由からですか?

足立先生の授業を受けていて、いつも分かりやすくかみ砕いて説明してくれるのが印象的でした。それで、この研究室だったらきちんと理解して深い研究に取り組めるのではと思いました。コンクリートを自分の手で作ってみたい、という気持ちも大きかったですね。足立研究室では、試験用にコンクリートを自分たちで実際に作り、測定や調査などを行って耐久性や美観などを研究しているので。僕はそもそもものづくりが好きで、ここで希望通りコンクリートの打設から研究に取り組むことができ、とても興味深い経験になりました。

—どういう手順で研究を進めていったのか教えてください。

前期は関係する論文を読んでまとめたり、研究のための予備知識をつけることに重点が置かれました。そうしなければ、研究をどう進めていくかを考えることもできませんでした。僕は仲間と2人で協力して、「超音波法・赤外線法及び質量法によるコンクリート破壊状況の把握に関する研究」をテーマに決定。コンクリートが凍害によってひび割れすると、強度が低下する恐れがあるため、コンクリートの試験体に程度の異なるひび割れを発生させて、その破壊状況を適切に把握できるか、 3つの方法で実験してみることにしました。研究の背景や実験の目的などを中間発表として先生に確認してもらってから、いよいよ本格的に実験を始めました。

コンクリートを作って、試験また試験。

—実験はコンクリートを作るところから動き出したのですよね。

はい、まず実験のために必要な100×100×200mmの試験体を33本作りました。実際の建築現場では、工場で作って運ばれてきた生コンクリートを型枠に流し込むのですが、ここでは一から自分たちで。材料をすべて計量し、秒単位で測りながらミキサーで練り混ぜ、出来上がったら型枠に流し込む。それを棒で突いて余分な水分や空気を抜き、型枠の隅々までコンクリートが行きわたるように締め固め。表面もきれいにならさないと実験時に差が出てしまうので、コテを使って丁寧に仕上げて。みんなで協力しなければできないことだと、つくづく感じました。さらに、コンクリートが固まるのを待って型枠から抜き、強度を出すために水の中に入れて養生して、ようやく試験ができる段階になるので、数日間にわたって出来上がりを待つ必要があります。分かっているとはいえ、卒業論文をまとめる締め切りもあるので、焦る気持ちもありましたね。

—そうして時間をかけて用意した試験体を使って、超音波試験などで内部の状況を見る段階へ。

超音波試験では、試験体1本につき鉛直対面、水平対面など44 カ所で検査を行ってデータを記録しました。コンクリートの中の壊れ具合を調べようという実験なので、ひびが入っていない試験体を100%として、加圧して90、80、70、60%の破壊を導入した試験体も用意。この5段階の試験体それぞれに超音波を当てて測定し、超音波伝播速度の低下が、内部状況を反映していると考えられるデータを得ることができました。

—そのほかに、赤外線試験と質量試験も行ったのですよね。

赤外線試験では、サーモカメラを使って試験体の表面温度の変化を撮影し、それによって劣化の兆候を発見できないかと実験。質量試験は、試験体のひびの中に水がどれだけ入るかで破壊の程度が分かるのではという仮説を立て、水につける前と後で試験体の重さを測って差を見てみました。

—3種類の試験からの結論は、どのようなかたちになったのですか?

赤外線法と質量法は仮説通りにはならず、破壊程度の把握には使えないという残念な結果でした。超音波法は、破壊状況を把握できるデータが出ました。ただ、測定する距離が長いところの方がより良い結果が出たんです。ひび割れのない試験体では、超音波の長さが同じになるはずなんですが、実際は測定箇所によってばらつきが出たので、測定箇所を多くし、かつ距離の長さを確保して測れば、さらに精度が上がるという可能性が見えました。

より良い空間づくりのために。

—初めての研究活動を通して、どんなことを感じましたか?

座学では経験できないことばかりで、もちろん面白かったです。僕はハウスメーカーに内定しているので、これから仕事でコンクリートを扱うことになります。工場から来たものをそのまま使うとしても、実際に作るのにはこんなに苦労があると理解しているのは違うと思います。今回の経験から、研究、実験にはまず知識がなければ動くことができないというのもよく分かりました。動くにしても、例えばこの日時に実験室は使えるかという確認がまず必要で、事前の準備の重要性を痛感しました。実験が本格化してからは、急にバタバタした感じでしたが、自分の中ではせっかくだからむしろ楽しむべき経験と捉えて、なんとかするしかないと思ってやり切りました。

—卒業研究発表会で、ほかの研究室の発表も見た感想は?

ほかの研究に触れる機会がなかったので、研究内容やデータがしっかりしているなと感心したグループもありました。気づいたのは、僕たちの研究室は発表資料のグラフの使い方がうまいなということ。グラフに入れる文字や数字も見やすくするように、足立先生がよく注意してくれていたんです。それで僕たちは、なるべくポイントを大きくして作っていたので、ほかのゼミの発表を見ると確かに小さくて読みにくくて。そういうところも、研究室によって差が出てくるんだなと思いました。

—4年間建築を学んで、いよいよ現場で活躍することになりますね。

僕は住宅に関心があって入学し、勉強するにつれて思ったのは、こんなに制限が多いのかということ。それなのによくあれだけのものができるなと実際の建物を見る認識が変わり、制限の中でいろいろつくり上げることが面白いのだと再確認できました。内定先では、住宅の施工管理を担当する予定です。人が住む空間を演出したい、つくりたいというずっと抱いてきた希望を実現できるのが楽しみです。

※学年は取材当時

工学部建築学科4年 田中 幹也 北海道札幌啓成高校出身