自然環境の中と生活の中。 現場へ行って「水」を考えます。
自然環境の中の「水」と、生活の中の「水」。山田先生はその両方を研究テーマとしています。山に入って川で水をくんだり、浄水場へ足を運んだり、現場を重視。「基本的に外へ出ていくのが好きなんです。その方が気持ちもいいですし(笑)」。現場での現象を理解するための実験も行って、私たちの毎日に欠かせない「水」をどう守るか考え続けています。
【研究】山から川、海までを視野に。キーワードは「水源保全」と「物質動態」
山の中の川には、いろいろなものが水に乗って流れています。水に溶け込む成分もあれば葉や枝の一部など粒状のものもあります。それらを虫が食べて、さらに魚が食べて、と水の中での生態系が成り立っていますが、その生態系を支えるエネルギー源になるものを山が供給しています。私の研究テーマの一つは、こうした自然環境の中の水質について。これから気候変動が進んでもし雪が降らなくなったら、落ち葉が雪の下で分解されて春先に流れてきていたのはどうなるのか。それが下流の生き物たち、さらに海にまでどう影響するのか。「水源保全」と「物質動態」をキーワードに、物質が山や周辺環境から川や湖、沿岸域といった水環境にどのように流れ出ているかを注意深く見続けています。今は、マイクロプラスチックも気になります。軽くて小さいマイクロプラスチックは大気中にも浮遊しているといわれていて、環境中でなかなか分解されません。山に降り注いでいるのなら、そこでたまっているのか、水の中に出てきているのか。今後はそうしたことも見ていきたいです。
【研究】北海道の水環境は特徴的。将来的には水質マップづくりを
将来的な夢として、北海道全域の水質マップづくりを考えています。道内にはさまざまな水質の環境が見られます。例えば日本の湿原の大半は北海道に存在していて、その水質は特徴的で、それに適応できる動植物のみが生きる特殊な環境になっていることもあります。土地固有のものとして残されるべきものです。一方、私たちの生活では水は欠かせません。生活で使う水、使った後の水のことを広い目で考えるためにも、今の北海道の水質はどのような特徴であるのかを現地で見て整理したいと考えています。同時に私は、生活の中での水の利用や循環にも強く興味があり、道内の上下水道のこれからについて考えていきたいと思っています。
【授業】「生活」と「水」の関わりについて考えてもらう場に
担当している「上下水道工学」では、市民生活を支える上下水道の施設や設計法をはじめ全体を俯瞰できるような内容の講義を行い、自分たちの生活の中での水について考えていきます。循環する資源である水を、「量」としてではなく主に「質」として生活の中で利用していることを意識してもらいたい。例えば必要な量、必要な質の水を、いかにエネルギーやお金をかけずに得ていくのか。不要になった汚れた水はどう扱うのか。水道など水インフラの整備によって今は蛇口から安全な水がいつも得られる状況になっていますが、今後もその状況を維持していくのか。今の仕組みを理解するだけでなく、今後の課題、将来の「生活」と「水」の在り方について自分なりの答えを持つようになることが、この科目の最終的な目標と考えています。
学生たちも一緒に現場へ。自分の判断で動く力がつきます
私の研究室は、学生を現場へ連れて行くのが特徴です。現場に行って、現場を理解し考える。自然の中であれ、浄水場などの施設であれ、現場では学生はお客さんではいられません。指示待ちの状況になることはないので、自ら動かなければ何も進まないということに気づき、周りの状況にあわせた自発的な動きをするようになります。浄水場などの施設の職員の方と一緒に調査や採水を行うことがありますが、その方たちはやはり動きが速い。そういう姿に刺激を受けて、学生は自分から動けるようになっていきます。就職して若い時はいろいろと現場を回ることがありますが、その時によく動くことを周りに評価してもらったという卒業生もいました。むしろ周りがあまり動かないので、なぜだろうと思うと(笑)。当たり前のことですが、「自分で考え自分で動く」が、研究室の方針の一つともいえます 。
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