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05 2022

<TOPIC工学部 生命工学科> もっと先へ。 大学院進学という選択肢。

卒業後に大学院へ進学する学生が多いことは、生命工学科開設時からの特徴の一つです。大学院では学部で学んだことをベースに自分の専門性を高め、より高度かつ先端の知識や技術を学ぶことができ、活躍の場を広げるチャンスにもなります。本学科は大学院に進学した卒業生に経験談を聞く機会など、進学希望者をサポートする体制を整え、これまでに本学大学院はもちろん北海道大学や東京大学、名古屋大学などの大学院に進学者を輩出してきた実績があります。今回、取材にご協力いただいた小林さんもその中の一人。在学中に所属していた研究室の小山芳一教授とともに、話をうかがいました。

工学部生命工学科 教授
小山  芳一

北海道大学大学院医学院博士課程3年次(遺伝子病制御研究所)
小林 拓斗
北海学園大学工学部生命工学科 2017年3月卒業
(北海道札幌篠路高校[現:北海道札幌英藍高校]出身)

生物系も情報系も学べたから。

–まず、小林さんが生命工学科に入学した理由を教えてください。

小林】 広い視野で、自分が何をやりたいのか探したかったんです。生物系もパソコンなどの情報系も好きだったので、将来的にどちらの分野を突き詰めるのか考えるところも含めて、大学で学びたいなと思って。それには、この学科がピッタリだったんです。大学入学前から、大学院進学を考えていたのですが、もし学んでいく中で就職の方が魅力的だったらそうしようとは思っていました。でも、大学に入って実際に学んでみるとやっぱり面白くて、子どもの頃から何となく抱いていた研究職はかっこいいなというイメージが、より具体的に固まっていった気がします。

–小山先生の研究室に所属することは、早くから決めていたのですか?

小林】 お世話になった小山先生を前にして言うのは申し訳ないんですが、どうしようかとずっと悩んでいて、それは小山先生ご本人にも相談していました。できるだけ広い視野でいろいろ学んでやりたいことを探していくと、生物系も情報系も面白くなって。どちらも本当に楽しかったんです。迷った末に小山研究室を選んだ大きな決め手は、先輩たちの卒業研究発表を聞いて、自分の興味があることを追究できると感じられたから。それで僕は、卒業研究で難治性炎症に対するDNAワクチンの開発に取り組みました。でも今思うと、もし情報系の研究室を選んでいたとしても、最終的に目指すところはあまり変わっていなかったかもしれません。僕が今、医学院で研究しているのは、がんや免疫についてなのですが、そうしたことに対して例えばビッグデータを解析して何かヒントを見つけ、そこから得られた答えを自分で実験して証明する、という生物系と情報系の両方から攻めていくような研究者を最終的には目指しているんです。

【小山】 ピッチャーとバッターを一人でやりたいんですよ(笑)。片方を捨てられない。欲張りなんです。

小林】 両方できればいいなと思っています(笑)。最近、生命系のジャンルの研究に、情報系専門の人たちが入ってきて解析に基づいて結果を出しているんですが、僕はそれを実際にはどうなのか自分で実験をして、さらに証拠を固めていくということをやりたいと思っているんです。そもそも今の研究内容に興味を持ったのは、小山先生のもとで免疫について学んだのがきっかけ。すごいシステムだけれど、まだ分からない部分もいっぱいあるので、免疫の方向からがんを攻めるということをやってみたいなと思って、進学する研究室を選びました。

在学中、実験室にて

–進学に向けた準備は、どのように進めていったのですか?

小林】 学部4年次の6-7月頃に今の研究室の説明会があり、そこに参加してここだと決めました。ほかにも調べていた研究室があったのですが、ちょっと違うなと感じていたところにその巡り合わせがあって、僕にとってはとても幸運でした。ただ、これから大学院への進学を目指す人たちは、もっと早い段階から調べて決めた方がいいと思いますよ。大学院の入試には、苦手な英語もありました。でもそこも運が良くて、同じ研究室にいた進学を考えている友人は英語が得意で、塾講師として教えていたんです。それで、過去問などをもとに教えてもらうことができました。ほかの科目についても彼と一緒に、授業で使っていた教科書の章ごとに重要だと思う部分を互いにまとめ、週1回パワーポイントで発表し合いました。彼と僕では重要だと思うところが少しずつ違ったので、補い合うような感じで勉強できたのは、入試だけではなく今の研究に対する知識としても役に立ちました。結果、2人で同じ研究室に入ることができ、彼は修士課程を修了して今は就職しています。

やればやるほど学びたくなる。

–生命工学科、小山研究室で身についたのは、どんなことだと思いますか?

小林】 いろいろありますが、研究をするにあたってということであれば4年次の卒業研究が大きいですね。この学科は先生と学生の距離が近いのが特徴ですが、研究室に入ると、より密接になります。小山先生からはワクチンによる免疫療法などの研究について、なぜこのテーマをやっているのか、重要性はどんなところかなどを直接聞けました。テーマ決めというのは研究では一番大事なことかもしれないので、そこを先生からじかに学べたのは、この学科だったからだと思っています。ここを選ばなければ小山先生に会うこともなかったでしょうし、今から考えると、ここしかなかったのかなと。小山先生はいつも優しく、丁寧に分かりやすく教えてくださいました。ただ、実験の成功のカギを握るようなパートに関しては、きっちり厳密にやるよう指導を受けました。

卒業研究発表会で優秀発表賞を受賞(2017年)

–博士課程修了後は、どのような方向性を考えているのでしょう?

卒業研究の概要

【小林】 なりたい研究者像と重なるんですが、学部でも医学院でもどちらかというとマウスや細胞を扱うようなウエットな実験をメインでやってきたので、もっと情報系の技術も学ばなければならないと考えています。今も研究室の中である程度、解析などを担当して、論文も書かせていただいたりしていますが、もっと高度なことをやるには独学ではスピード的に難しいと思うので、そうしたことをやっているラボで学ぶのが理想です。生命系のことも、情報系のことも、やればやるほどもっと知識が必要になってくるんです。それで少し前から、この学科の情報系が専門の先生に教えていただく機会をつくってもらっています。在学中に授業を通して知っていたこともあって、相談すると快く対応してくださいました。これは、この学科の魅力にもつながることで、本当にありがたいです。今の研究室で解析などをやらせてもらっているのも、学部時代にプログラミング言語やデータベースなどを授業で学んでいたため、自分で調べることでできるようになっていったから。ここでの勉強が、基礎としてとても大きかった。ですから、進学を考えている後輩、特に生命系を目指す人たちには、今後は情報系が間違いなく必要になるので、情報の授業もきっちりとやってほしいなと思います。僕は最近、「北海道大学DX(デジタルトランスフォーメーション)博士フェローシップ」に採用され、博士課程在学中に研究費などの支給を受けられることになりました。自分の専門分野と情報分野を融合させた研究を行おうとする学生を援助するプログラムで、採用された時には生命系と情報系を学んできた生命工学科出身の強みを一つの形にできたなと思いました。

–大学院進学にあたって、親身なサポートもしてくれたそうですね。

小林】 先生に相談に行くと、例えば研究室はどういうところを見て選んだらいいのかとか、経験や情報に基づいていろいろ教えてくださいました。卒業研究の際には、これ以上は絶対に必要ではないという段階の実験でも、今後のことを見越してやらせてもらえて、身につけた手技は大学院で生かすことができました。実験などを担当するスタッフの方には、学生が行うバイオテクノロジー実習の準備を手伝わせてもらいました。そこでは、どこからどこまでが実験なのかということを教わりました。例えば準備段階で適切な道具をそろえなければ、実験の途中で不具合が生じるかもしれないし、結果が変わってしまうこともある。後片付けが不十分であれば、次の実験に差し支えることもある。最初から最後まですべて整ってこそ実験なんだと教わったのは、すごく大きな経験になりました。振り返ると、研究室に入ってからもその前の段階からも、院へ進む非常に良い準備をさせてもらったと感じます。

–小山先生は、在学中の小林さんをどんなふうに見ていましたか?

小山】 その時の思いつきではなくて、真剣に自分の興味を突き詰めたいというか、ちゃんと考えているなというのが分かりました。卒業研究のテーマにも一生懸命に取り組んでいたし、ほかの学生より一歩も二歩も先を見て進んでいた気がします。私のこれまでの経験から、研究者を目指すのは覚悟がいるということも伝えました。それでも、自分の気持ちに正直であることもやはり大事なので、進学するなら応援するから気軽に相談に来るようにと話していました。今では研究者同士としての話ができて、彼の方がむしろ先に行っているけれど、それがとてもうれしいし、誇りに思う。いろいろ教えてもらって、これまで教えてきた分を返してもらっています。

小林】 もっと返せるように頑張ります。

【小山】 それが一番の恩返しです。本学科は、生命系と情報系の両方を勉強できて、それが互いにつながっているということを、彼はまさに具現化している。ですから、こういう先輩が活躍しているということを、アピールしていきたいです。

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