<生命工学科トピックス> 企業を相手に プレゼンデビュー
2023年11月、札幌商工会議所などが主催する「第6回学生アイディアプレゼンテーション」に生命工学科の学生3チーム(計7名)が参加しました。このイベントは、大学生と地元企業のマッチングを通して、新分野・新商品の開発につなげるというもの。学生たちが発表したアイディアに興味を持つ企業が現れれば、製品化されて世の中に出るかもしれません。プレゼンに参加した生命工学科3年生の金木美月さんと若狭胡桃さんに話を聞きました。
[学生アイディアプレゼンテーション参加]
工学部生命工学科3年 金木 美月
工学部生命工学科3年 若狭 胡桃
聞く人の立場になって考えた。
——どうして「学生アイディアプレゼンテーション」に参加しようと思いましたか?
【金木】越前谷博先生(生命工学科)から「学生アイディアプレゼンテーション」のことを教えてもらいました。企業の方を前にプレゼンする経験はきっと自分の力になるし、こういう場を与えてもらえるのも学生の今だからこそ。だから、挑戦してみたいと思いました。
【若狭】私は、小中高と人前で発表する経験を積んできませんでした。4年生になれば卒業研究の発表が控えていますが、それがプレゼンのデビューになるのは怖かったので、いい機会だと思い、参加することに決めました。
——発表テーマについて教えてください。
【金木】今回私たちは「AIを用いた定点カメラからの異常検知による独居高齢者見守りシステム」というテーマで発表を行いました。簡単にいうと、ノートパソコンに内蔵されたカメラの映像から、ディープラーニング技術を用いて様々なシュチエーションを学習し、「不審者がいる」「階段で転倒して動けない」といった異常動作を検知したのちに通知するという見守りシステムです。テーマ自体は、昨年(2022年)度に越前谷先生の研究室で先輩たちが行った卒業研究を引き継いだものです。見守りシステムというと、設備を整えるだけでも費用負担が大きいイメージがあったのですが、パソコン内蔵カメラのような安価なカメラで誰でも利用できるという視点がいいなと思って、関わらせてもらいました。
【若狭】夏のインターンシップで社会問題に対応するアイディアを学生みんなで考える機会があり、そのときに独居高齢者の増加が社会問題になっていることを知りました。「独居高齢者見守りシステム」というテーマは、これからの社会ですごく重要視される可能性があると感じ、やりがいのある内容だと思いました。
——本番に向けてどんな準備をしましたか?
【金木】まずはプレゼンの資料を作るところから始めました。このシステムの強みは、どこの家庭にもあるような安いカメラさえあれば、それぞれの状況に応じた異常検知が可能となるので、どんな環境でも導入しやすい点にあります。ただし専門的な内容を多く含んでいて、システムの名前もカタカナばかり。私たちが提案する技術の強みが、分野を超えてどんな企業の方にも伝わるよう、わかりやすくまとめるのに苦労しました。例えば、人が生活しているところをカメラで撮り、その動画ファイルをフレーム画像にして、ディープラーニング技術を使ってファインチューニングを行うのですが……。
——ごめんなさい、頭がボーッとしてきました。既に追いついていません!(苦笑)
【金木】そうですよね(笑)。噛み砕いて説明するのが難しいんです。それで、若狭さんと越前谷先生と一緒にどうしたら伝わるのか何度も話し合いました。当日の発表は私が行いましたが、資料だけではなく、どれくらいのスピードで、どう抑揚を付けて、どこで間(ま)を取って話すのか、繰り返し練習しました。
【若狭】当日は制限時間があるので、練習中は金木さんのそばで私がストップウオッチを確認し、「ここはもう少しゆっくりしゃべろう」とか、「このスライドではもうちょっとここを主張したらいいよね」といった感じで、二人で細かく調整しました。発表の後には質疑応答の時間もあるので、どんな質問が来るのかを先回りして想定して、回答を用意しました。
——例えばどんな質問が来ると想定したのですか?
【若狭】スライドには書かなかったのですが、「システムを導入するのにどれくらいのコストがかかるのか?」とか。インターンでアイディア発表をしたときに、会社の方から「そのアイディアは面白いけれど、コストがかかりすぎるから実現は難しいね」といったご指摘をいただいていたので、企業の方はそういうところを重視するんだと思い、質問に備えました。
企業のトップに直接プレゼンするチャンスも!
——本番はいかがでしたか?
【金木】緊張しました。会場にいるのが、スーツを着た大人ばかりだったので。
【若狭】50社ぐらい来たと聞いています。会場の空気がすごかった。発表前に二人で「緊張するね」「怖いね」なんて話していたんですが、発表が始まった瞬間、金木さんの表情がスッと切り替わって、かっこよかったです。
【金木】登壇前は心臓バクバクだったんですけど、事前に若狭さんや越前谷先生と何度も何度も発表練習をしてきたので、いざ始まったら、自然と言葉が出てきました。
【若狭】本当に堂々としていました。企業の方も興味を持った様子で発表を聞いてくださっていました。質疑応答の場面では、「なぜウェアラブルデバイスではなく、定点カメラを利用したのか?」という質問があり、私たちの強みである低コストという強みをもう一度、お伝えすることができました。
——発表後には、興味を持った企業から声をかけてもらったと聞いています。
【金木】はい。機能性食品原料を開発・製造する札幌のバイオ企業に興味を持っていただき、後日、会社を訪問しました。当日は社長と副社長と常務の方を前に、私たちのシステムを改めて説明しました。
——すごいメンバーですね。想像するだけでこちらも緊張します。反応はいかがでしたか?
【金木】私たちが想定した独居高齢者の見守りではなく、工場の監視システムとして使えないかというご相談でした。例えば、従業員の安全を見守ったり、悪意を持った人間が工場内に侵入することを防げるのではないかと。面白かったのは、社長さんは獣医師として動物病院で働いた経験があり、「高齢者だけではなく、ペットの見守りシステムにも応用できそうだね」というアイディアをいただけたことでした。私たちのシステムをどう応用したら会社や社会に活用できるのかを、広い視野で考えていらっしゃったのが印象的でした。
【若狭】会社を経営するトップの方々が、利益とコストを考えながら判断する姿を見て刺激を受けました。私も社会に出たらそうしたものの考え方、行動ができるようになりたいと思いました。
——貴重な経験になりましたね。今回の経験をどのように生かしていきたいですか?
【金木】今回、AIをテーマとした研究に触れたことでIT系の研究に対してますます興味が湧きました。それと、学生に対してではなく、企業の方に自分たちが作った資料を見ていただき、自分の言葉で語る機会を体験できたことが私にとっては大きくて。プレゼンや会社訪問で得た経験を、卒業研究や卒業後の人生でも生かすことができたらと思います。
【若狭】私は「学生アイディアプレゼンテーション」を通して、ものごとにチャレンジすること、それを成し遂げるプロセスの二つを経験させてもらいました。今回は独居高齢者をテーマにした研究でしたが、それだけではなく、数多くある社会問題を解決しながら、同時に社会を発展させていけるような働き方ができたらと思います。
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