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25 2020

まちづくりの武器になる そこにしかないストーリーを探りに。

経済学部地域経済学科 濱田 武士 教授

沼田町、倶知安町、下川町、東川町…濱田先生は、道内のさまざまな地域を学生と一緒に訪ね、歴史や文化、環境などから、そこにしかないストーリーを探っています。それをもとに地域資源を発掘し、人口が減ったとしても明るい未来をどうつくっていくか。授業もゼミも研究も、さらには地域貢献も、すべてつながった活動で地域振興の起爆剤となることを目指しています。

【研究】「地域資源」を発掘し、人が訪れるようなコンテンツを発信

人口減少社会に陥った地域のストーリーを探り、未来に向けての展望を探るための教育・研究をしています。道内のいろいろな地域に出かけて話を聞き、どんなストーリーがあるかを分析。それを使って人口減少をどう食い止めるか、あるいは明るい未来をどう築くかという目線で考えていきます。「地域資源」を生かして、いろいろな人がその地域を訪れるようなコンテンツを見つけると、交流人口を増やすことにつながります。すぐに定住人口を目指すのではなく、まず交流人口を増やし、次に地元としっかり関係を築く関係人口を増やす。その中から移住希望者が出てきて移住人口につながり、定住人口になる。高度成長期までの北海道の地域経済は、炭鉱産業など国策的な外来型開発に依存したものでしたが、今は地元の歴史、文化、環境などを武器に交流人口を増やす「内発的発展」の流れが芽生えています。その芽生えているもの、あるいはそれになり得る何かを見つけることで、交流人口-関係人口-移住人口-定住人口へと階段を上がるようにつなげていけると考えています。

【研究】働く・暮らす・交流する。三つの場のバランスで魅力ある地域に

地域は働く場であり、暮らす場であり、人と人とが交流する場でもあります。人が根付くには、その三つの場のバランスが取れていることが大事です。人が住んでいる以上そこは働く場であるのですが、暮らす場として良いかどうかも重要となる。さらに交流の場として充実すれば人の出入りが増え、ヒト・モノ・カネが動いて、おのずと経済が回る。「地域資源」を人の交流に活用するという発想が、北海道ではとても重要になっています。まちのいろいろなものを人に来てもらう材料にすることで、「人口が減ってもにぎやかだね」という世界をつくれる。にぎわいは大事な要素なので、絶やさないようにどうマネジメントするかが今のまちづくりには必要なのです。

【授業】「地域研修」で地域づくりの現場を自分で見て聞いて体験

ゼミ単位で取り組む「地域研修」は、対象地域の事前学習から現地研修、事後学習、報告会などを含めた1年間のプログラムです。私のゼミが2020年に訪ねたのは3カ所。観光によるまちづくりをテーマに倶知安町へ。下川町では、森林資源を生かしたゼロエミッション型産業から移住者を増やしていることなどを学びました。沼田町は、雪、蛍、祭り、産業遺産、化石発掘体験など、地域資源を生かしてたくさんのコンテンツをつくっています。人口は少なくても、自分たちのまちにはいろいろあるということが誇りになり、そういうものが人を呼び寄せることが自信にもなる。ここでは学生が、JR廃線問題について利用者にアンケート調査を行い、地域貢献の役割も果たしました。フィールドスタディでは、教育も地域貢献も研究もつながっています。地域研修を通じた活動が、北海道の地域振興の一つの起爆剤になれば。大した起爆剤ではないけれど、こうした積み上げがいろいろなことにつながっていくので、そのネットワークの核になりたいと思っています。

いつか地元に戻って貢献したいと思うなら、ぜひここへ!

地域研修で現場に行くと、地域づくりの実践をしている人のナマの話を聞くことができ、その立場で物事を考えることができます。それで、学生には気づきが生まれます。地域づくりを疑似体験することで当事者の意識になり、地域に対する問題意識も膨らみます。相手の立場で考えるだけではなく、自分のこととして考えるんです。経済学には架空の世界で理論を追っていくところがあり、それだけでは頭でっかちになってしまいますが、相手と自分と行ったり来たりしながら考えると、現実的な対応の重要さが分かる。制度の運用の仕方など現場にこそある知恵も学べます。本学は公務員志望者が多く、私のゼミにも地元を良くしたいという志を持った学生が来ます。授業、地域研修、ゼミなど一連のプロセスで、地域づくりの担い手を育てていきます。

経済学部地域経済学科 濱田 武士 教授
[専門分野]地域経済論、協同組合論、水産政策論 [主な担当科目] 地域経済論、地域研修

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