「経営学と自分を学ぶ」。 チャレンジの4年間にしてほしい。
「アイデンティティ」は、自我同一性、自分は何者かという概念などと説明されます。金先生が研究する「組織アイデンティティ」は、人間と同じく組織もアイデンティティを持っていると捉えるもの。アイデンティティの観点から、組織やそのメンバーの行動を解明しています。難しい分野ですが、自分のアイデンティティを考えてみることが入り口になりそうです。
【研究】テーマは組織アイデンティティ&アイデンティフィケーション
組織アイデンティティは、「組織としてのわれわれは何者か」という組織レベルのこと。組織アイデンティフィケーションは、「組織に対するメンバーシップの認知+メンバーの一員であるという帰属意識」で、組織の中の人に注目します。例えば「北海学園大学の学生としての私」と認知することで、本学の学生らしく振る舞う、より勉強に励むといった行動につながるということです。私は、アイデンティティの観点から、組織やそのメンバー(従業員)の行動を解明する研究を行っています。組織アイデンティティは、環境の変化や新たな競争相手など、脅威となる要素がある際に有効とされます。例えばコロナ禍で厳しい経営環境に直面している企業の多くは、客観的なデータよりも「組織としてのわれわれは何者か」を再確認・再構築していく必要があります。組織アイデンティティは組織にとって重要な意思決定に影響し、その在り方も左右するので、必然的にメンバーに影響を及ぼします。優良企業として社会的に認知されるようになると従業員は誇りを持つ、といった現象も組織アイデンティティとアイデンティフィケーションの概念から説明できます。
【研究】将来どうなりたいのか考えることがアイデンティティの構築に
人のアイデンティティは、「私としての私」に加えて国籍、名前、学校、仕事、家族などの社会的な部分も合わせたもので、一言では説明できません。高校生であればその高校の一員であり、部活に入っていればその部員でもあります。さらに、大学ではどんな勉強をしたいのか、将来何をしたいのかと考えていくこともアイデンティティにつながります。そうした自分自身のことから、企業にもアイデンティティがあると考えていくことができます。皆さんもよく知っているアップルは、もうスマートフォンやパソコンをつくる会社ではなく、サービスなどそれ以上をつくることを目指しています。それは、アイデンティティが変わったとも捉えられます。そのままでもいいのに、自分たちがどうなりたいかをもう一度考え、企業としてのアイデンティティを再構築した例といえます。
【授業】社会人になった時に役立つ「組織」について理解を深めます
「企業行動」は、企業としての行動のマクロレベルと、企業行動を実際に起こしている企業内個人に着目するミクロレベルに分けて捉えられます。二つのレベルに共通するのは、いかに外部環境の変化に適応しながら企業としての目的を達成していくか。そこで授業では、企業が目的達成のために戦略、組織、人をどのようにマネジメントするかを考えていきます。基本的には、社会人になった時のために、組織を詳しく知ることができるテーマを選んでいます。例えば組織構造が分かっていると、自分が勤める企業や組織を理解できるところがあると思うんです。コロナ禍の今は特に柔軟性が問われていますから、柔軟性を持った組織デザインの話からイノベーション、コンフリクト、交渉、権力などへ。多くの学生がコンフリクトの話に興味を示しますね。みんな避けたいと思っていたけれど、生産的なコンフリクトもあるんだと。授業でグループディスカッションを行うのは、ある程度のコンフリクトはプラスの結果につながることを経験してもらう意図もあります。
もっと自分を出していい。考えの違いを調整してより良いところへ
学生にはとにかく自分で考えて、それをアウトプットできるようになってほしいと思います。人に伝えることは大切で、そうすることで自分の頭の中も整理されます。自分の考えがあるのに発言できないことが多いので、「自分を出していいんだよ」とも伝えたいです。考えや意見は、言わなければ誰にも分かりません。違いがある中から調整し、生産的なコンフリクトによってより良いところへ一緒に向かっていくことができるんじゃないかと思うんです。おそらく発言を躊躇してしまうのは、失敗するかもしれない、間違いだったらどうしようと思うからですよね。でも、間違っていてもいいんじゃないですか。間違いや失敗は新しいこととその成功につきものです。失敗を恐れずいろいろチャレンジして経験して、レジリエンス(回復力)を身につけた人になってほしいと思います。
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