経済学が問うているのは ご飯を食べて生きること 社会を再生産すること。
マルクスの『資本論』は、企業も個人も利益を追求してきた近代の資本主義社会の原理を構造的に解明しています。大屋先生の専門は、マルクス主義をさらに展開させた社会経済学。「経済学は、ご飯を食べて生きることを含め、社会を再生産するあり方を問う学問」と、学生の身近なことに絡めて解説します。
「経済」とは、ごはんを食べること。
–そもそも経済学とは?
経済学とは基本的に「ごはんを食べること」なんです。「ごはんを食べる」と聞くと、社会でお金を稼ぐことと思うかも知れませんが、ごはんを食べることは、決して1人ではできません。他者とのいろんな関係性があって初めてごはんが食べられます。コンビニでお弁当を買う。そのお弁当には、素材を作る人、調理する人、パッケージを作る人、運ぶ人、売る人と、たくさんの人が関わっています。経済学というのは本来、「他者と一緒に生きていくために、自分たちはどうしたらいいのか」ということを考える学問です。企業を運営したり利益を追求したりする経営学とは、そこが異なります。もう少し広い視点で、自分たちはどうやったら生きていけるかを考えるのが経済学です。
–経済学科ではどんなことを学ぶのですか?
基本的には経済を「理論」「歴史」「政策」という3つの観点から考えて、人間がどうすればごはんを食べて生きていけるのかを考えます。
理論とは、「社会の中でどうやってごはんを食べるか」ということを、全体的に見渡すために必要な知識にあたります。そうした理論の背景には、必ず「どうやってごはんを食べてきたか」という歴史があり、それも知らなくてはなりません。そして、この理論と歴史を知ることによって、「どうすれば未来にきちんとごはんを食べていけるのか」という具体化の方法を考えるのが政策です。この3つの観点のどこに重点を置くかは、人それぞれですが、経済学科ではこうした理論、歴史、政策の観点から経済を学びます。
–たくさん難しい言葉が出てきそうですね。
(笑)。そうかもしれませんね。でも、難しい言葉には難しいなりの意味があると思っているんですね。同じような物事を平易な言葉と難しい言葉で見たとき、意味はまったく同じではありません。例えば、「ごはんの食べ方」と「経済のあり方の問題」は同じことを意味していますが、「経済のあり方の問題」のほうが、国全体や社会全体を含む問題として捉えることができます。つまり、一度難しい言葉で自分の中に取り込むことで、視野を広げることができるんです。これは僕の個人的な見解ですが(笑)。いずれにしても、大学で学ぶうちにそうした難しい言葉には自然と慣れていきますよ。
経済の知識は、「社会という海」に出るための「地図」。
–先生のゼミではどんなことをしているのですか?
私の専門は社会経済学です。批判的に社会を見るということを考えていて、社会の構造や政治のあり方、文化のあり方などにも広げて複数の観点から経済の問題を考えています。
学生が研究対象とするのは、どんなことでもいいんです。要するに社会を考えるゼミです。「社会とは何だろう?」ということを、経済を切り口にしてもいいですし、漫画が好きな人は漫画を切り口にしてもいい。ただし、ただ漫画を読むのではないですよ。漫画には漫画論があり、さらには、出版業界がどう継続していくか、漫画に携わる人たちが次世代にバトンタッチしていくにはどうしたらいいか、社会を再生産する視点を入れながら考えるといろんな問題につながっていきます。
多くの学生は、少子化問題だったり、高齢化社会や貧困問題だったり、格差社会、労働問題などをテーマにしてきますが、中には第2次世界大戦前のプロレタリア文学についてレポートをまとめてきた学生もいます。文学の観点で、社会や政治のあり方を問うというなかなか面白い切り口でした。
ほかにも、貧困問題についてレポートを書いてきた学生は、「このまま格差が広がると階級社会になってしまう」と論じたのですが、そこから「格差と階級は同じだろうか?」「いや違う」「でもつながっている」と、議論が広がりました。興味のあるテーマでいいんです。どんな観点からも、社会学、経済学につなげることができます。
–経済学の学びを通して、学生に身につけてほしいことは?
大学の4年間というのは、社会に出るための準備期間です。卒業後は社会に出るのだから、当然、その社会を知っておかなくてはならないでしょう。もし、何の知識もないまま社会に出てしまったら、それは暗闇の海に地図も持たずに船出するようなものです。転覆するかもしれませんよね。経済学を学び「ごはんの食べ方を知る」ということは、海に出るための地図を手にするということ。社会に出てごはんを食べて行くために、必要な知識を身につけてほしいと思います。
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